資産形成・老後資金 2023.3.31

60歳で再雇用となった場合の給与相場とは?収入減をカバーする制度も紹介

定年退職後はどのように過ごすか、もうお決まりでしょうか。体力や健康面に問題がなければ、再雇用や再就職で引き続き働くこともおすすめです。

長く給与を得ることで世帯収入が上がり、家計の大きな助けとなるほか、人手不足が叫ばれる社会にも貢献できます。豊かな老後を送るには安定した経済状況が必要です。

本記事では、60歳以降の高齢者が平均どれくらいの給与をもらっているのか、国税庁の調査結果を基に解説します。

また、再雇用や再就職で給与が減った場合に減額部分の一部をカバーする公的支援制度も紹介します。制度を利用するには条件や注意点があるため、正しく理解して活用しましょう。

60歳以上の就業状況は?

世間一般の高齢者が、どれくらいの割合で働いているかご存じでしょうか。高齢者の就業状況のデータをみてみましょう。

内閣府「令和4年版高齢社会白書」によると、2021年の高齢者就業率は60~64歳で71.5%、65~69歳で50.3%です。60歳を境に非正規の割合が上昇してはいますが、60歳を超えても多くの人が何らかの職に就いて収入を得ていることがわかります。

また、同調査では60歳以上の約4割が「働けるうちはいつまでも働きたい」と回答しており、高齢者の就業意欲の高さが窺えます。

家計の収支バランスを考えるとき、支出を見直すことも有効ですが、働いて収入を増やすことができれば、よりゆとりをもつことができるでしょう。

60歳以降の給与相場はどれくらい?

次に高齢者の給与相場について解説します。60歳以降の高齢者の給与相場はどれくらいなのでしょうか。以下では、60歳以降の給与平均データを紹介します。

国税庁の「令和3年分民間給与実態統計調査」では、男性の場合、60歳になるまで年齢が上がるとともに給与も上がっており、55~59歳の平均年収は男性が687万円、女性が316万円、男女平均で529万円というデータが出ています(※)。

しかし、60~64歳になると、平均年収は男性が537万円、女性が262万円、男女平均で423万円というデータが出ており、全体的に、60歳を境に下がりはじめることがわかります(※)。

年齢階層別の平均給与 55~59歳 65~69歳
男性 687 537
女性 316 262
男女平均 529 423

(万円)

(※)出典:内閣府「令和4年版高齢社会白書(全体版)」を元に筆者作成

また、業種別での平均給与のデータは以下となります。

業種別の平均給与 55~59歳 65~69歳
建設業 617.6 541.9
製造業 635.3 470.8
卸売業、小売業 435.7 356.9
宿泊業、飲食サービス業 307.7 265.9
金融業、保険業 791.0 567.2
不動産業、物品賃貸業 534.1 465.1
運輸業、郵便業 474.6 366.9
電気・ガス・熱供給・水道業 932.9 508.8
情報通信業 824.6 586.3
学術研究、専門・技術サービス業、
教育、学習支援業
628.8 550.4
医療、福祉 450.2 427.7
複合サービス事業 529.8 308.5
サービス業 434.5 357.9
農林水産・鉱業 363.9 332.4

(万円)

 (※)出典:国税庁「民間給与実態統計調査結果」を元に筆者作成

再雇用後の収入減を補う制度はある?

定年を迎えた後に再雇用や再就職で継続して働く場合、定年前より給与が下がってしまうケースが多く見受けられます。この収入減を補うことを目的として「高年齢雇用継続給付」という雇用保険の支援制度があるのをご存じでしょうか。

60歳以上65歳未満の雇用保険被保険者が一定の条件を満たす場合に、申請手続きを行うことで給付金を受け取ることができる制度です。

支給額は、賃金の低下率に応じた支給率を支給対象月の賃金額に乗じて計算されます。

原則として事業主がハローワークに申請を行いますが、希望すれば本人による手続きも可能です。

高年齢雇用継続給付の給付金には、次の2種類があります。

・高年齢雇用継続基本給付金
・高年齢再就職給付金

どちらも似た名前の給付金ですが、それぞれ条件が異なります。

各給付金の特徴については、次の項で詳しく解説します。

高年齢雇用継続基本給付金

高年齢雇用継続給付制度の給付金として、まず一つ目に挙げられるのが「高年齢雇用継続基本給付金」です。

雇用保険の基本手当を受給しておらず、再雇用後の賃金が所定の額より低い場合に給付金を受け取ることができます。

高年齢雇用継続基本給付金を受け取るためには、次の条件を満たす必要があります。

・60歳以後のみなし賃金を含む賃金が60歳時点の75%未満
・雇用保険の基本手当を受給していない
・60歳以上65歳未満で雇用保険の一般被保険者
・被保険者であった期間が5年以上

高年齢再就職給付金

高年齢雇用継続給付制度の二つ目の給付金が「高年齢再就職給付金」です。雇用保険の基本手当を受給して再就職し、再就職後の賃金が所定の額より低い場合に給付金を受け取ることができます。

高年齢再就職給付金を受給するための条件は以下のとおりです。

・再就職後の各月の賃金が、基本手当の基準日額を30倍した額の75%未満
・雇用保険の基本手当を受給し再就職した
・60歳以上65歳未満で雇用保険の一般被保険者
・基本手当の算定基礎期間が5年以上ある
・再就職の前日時点で基本手当の支給残日数が100日以上ある
・1年を超えて継続雇用されると認められる安定した職業に就いた
・同一の就職で再就職手当の支給を受けていない
・支給対象月の初日から末日まで被保険者である
・支給対象月の賃金が所定の限度額未満である
・申請後に算出される基本給付金の額が所定の限度額を超えている
・支給対象月の全期間、育児休業給付または介護休業給付の支給対象となっていない

高年齢継続給付制度を利用する際の注意点

高齢者の収入減の一部を補ってくれる高年齢継続給付制度ですが、給付金を受給するにあたっては、事前に把握しておきたい注意点があります。

次の項では、各給付金制度の注意点を解説します。

年齢条件が65歳未満

高年齢継続給付制度の年齢条件は、60歳以上65歳未満と定められています。65歳以上の再雇用・再就職では利用できません。

「生活費として給付をあてにしていたが対象外だった」と、後になって困ることのないよう、再雇用・再就職のタイミングには注意しましょう。

高年齢再就職給付金と再就職手当との併給はできない

雇用保険の再就職手当と、高年齢再就職給付金の両方を受け取ることはできません。

必ずどちらか片方を選択する必要があるので、慎重に検討するようにしましょう。

在職老齢年金が減額または停止となる場合がある

働いて厚生年金に加入しながら老齢厚生年金を受け取る場合、年金の全部または一部が停止される可能性があります。そして高年齢雇用継続給付を受ける場合は、さらに支給停止額が増加します。

きちんと事前に把握しておきましょう。

厚生年金の停止条件を含め、詳細はお近くの年金事務所で相談ができます。金額を確認したうえで、働くようにしましょう。

育児休業給付・介護休業給付の対象月は支給されない

育児休業給付・介護休業給付を受ける場合も注意が必要です。その月の初日から末日まで継続して育児休業給付または介護休業給付の対象になる休業をした場合、高年齢雇用継続給付の対象はなりません。

ただし、月の一部のみ育児休業給付または介護休業給付の支給対象だった場合は、高年齢雇用継続給付の支給対象となります。

育児休業給付・介護休業給付の対象が月の全部か、一部かで、高年齢雇用継続給付で受け取れる給付金が変わってくることを理解しておくようにしましょう。

再雇用後の老後資金についてはauフィナンシャルパートナーにご相談を

高年齢継続給付制度の対象者であれば、再雇用や再就職で収入が減っても一部を補うことができるため、即座に慌てる必要はありません。しかし、年金の停止や年齢条件などの注意点は必ず事前に把握しておくようにしましょう。

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高年齢継続給付制度は、注意点に気をつけて活用すれば家計の大きな助けとなります。再雇用・再就職で収入が減ってしまう場合、対象者であればぜひ活用したい制度です。

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執筆者名:
垣田 京子
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