企業型DCとiDeCoは併用可能!条件やメリット、注意点を解説
年金には、一定条件とともに加入が義務づけられている国民年金や厚生年金などの「公的年金」と自由意思で加入できる「私的年金」があります。「企業型DC(企業型確定拠出年金)」と「iDeCo(個人型確定拠出年金)」は、いずれも私的年金に該当します。
企業型DCもiDeCoも、いずれも加入者が運用するため、上手に選択すれば受け取れる年金額を増やせるというメリットがあります。ただし、企業型DCとiDeCoは併用できますが、条件があるので確認が必要です。
併用の条件やメリット、注意点、どのような方に併用が向いているか説明します。将来受け取れる年金を増やしたい方は、ぜひご覧ください。
- 企業型DCとiDeCo(イデコ)の違い
- 企業型DC
- iDeCo(イデコ)
- 企業型DCとiDeCoのメリットとデメリット
- 企業型DCとiDeCo(イデコ)の併用の条件
- 企業型DCとiDeCo(イデコ)を併用することによるメリット
- 税制面で優遇される
- 運用金額が増える
- 運用期間を長くできる
- 企業型DCとiDeCo(イデコ)を併用することの注意点
- 上限額が決まっている
- 運用の手間が増える
- 転職の際は手続きが必要になる
- 企業型DCとiDeCo(イデコ)の併用をおすすめする人
- 企業型DCとiDeCo(イデコ)の商品の選び方
- 異なる性質の商品を組み合わせる
- 手数料に注目する
- 定期的に見直す
- 企業型DCとiDeCoの併用で悩んだらプロに相談してみよう!
- かんたん3ステップで相談可能
- 3つのポイントで安心
- auマネープランなら相談無料
- まとめ
企業型DCとiDeCo(イデコ)の違い
企業型DCとiDeCoの概要は、次のような特徴があります。以下をご覧ください(※1)。
年金の種類 | 企業型DC | iDeCo |
加入対象者 | 勤務先が企業型DCに対応している方 | 20歳以上65歳未満の方 |
掛金の負担 | 事業主、上乗せする場合(マッチング拠出)は加入者 | 加入者本人 |
掛金の支払方法 | マッチング拠出は給与から | 口座振替 |
手数料(※2) | ・加入者手数料:300円 | ・初回・資産移換時:2,829円 ・掛金納付時:105円 ・掛金還付時:1,048円 ・運営管理機関、事務委託先金融機関への手数料 ・投資信託を運用する場合は信託報酬など |
税制上の優遇措置 | ・掛金は給与とはみなされないので所得税・住民税が非課税 ・マッチング拠出の掛金は全額所得控除 ・運用益は全額非課税 ・年金として受け取るときは公的年金等控除、一時金として受け取るときは退職所得控除の対象 |
・掛金は全額所得控除 ・運用益は全額非課税 ・年金として受け取るときは公的年金等控除、一時金として受け取るときは退職所得控除の対象 |
(※1)出典:企業年金連合会「確定拠出年金のしくみ」
国民年金基金連合会「iDeCo(イデコ)の特徴」
(株)日本企業型確定拠出年金センター「企業型確定拠出年金の導入にかかる費用はどのくらい?運営管理費用と資産管理費用について解説します」
国民年金基金連合会「iDeCoのご案内」
三井住友海上「企業型確定拠出年金(企業型DC)企業型DCのメリット」
国民年金基金連合会「iDeCo(イデコ)のイイコト」
上記資料を元に筆者作成
(※2)企業型DCの手数料は税抜、iDeCoの手数料はいずれも税込です。
企業型DC
企業型DCとは企業型確定拠出年金のことです。従業員が加入者となりますが、掛金は事業主が拠出します。ただし、規約に定めると加入者は掛金を上乗せできます。これを「マッチング拠出」と呼び、全額所得控除の対象となります。
運用商品は、事業主が契約している運営管理機関が提示したものから加入者が選択します。運用管理機関は、加入者自身では選択できません。
掛金と運用益、年金(一時金)は、いずれも税制上の優遇措置が適用されます。事業主が拠出した掛金も、給与とはみなされないため、所得税・住民税が非課税となり、税制上のメリットがあります。
iDeCo(イデコ)
iDeCoとは個人型確定拠出年金のことです。20歳以上65歳未満の方が利用できます。ただし、企業型DCを利用している場合は、加入中の企業型DCの規約でiDeCoへの加入が認められているときのみ利用できます。
加入者各自が運用管理機関を選択し、そのなかで運用商品も自由に選択できます。ただし、加入している公的年金の種類などによって掛金額の上限が異なる点にご注意ください。
また、掛金と運用益、年金(一時金)は、いずれも税制上の優遇措置が適用されます。
企業型DCとiDeCoのメリットとデメリット
企業型DCとiDeCoの主なメリットとデメリットは、以下をご覧ください。
企業型DCとiDeCoのメリットとデメリット
年金の種類 | 企業型DC | iDeCo |
メリット | ・掛金は企業が全額拠出 ・掛金は全額所得控除 ・運用益が非課税 ・手数料がかからない(会社負担) ・転職時に積立金の持ち運びが可能 |
・掛金は全額所得控除 ・運用益が非課税 ・運用機関を個人で選択できる ・転職時にほかの年金制度に積立金の持ち運びが可能 |
デメリット | ・現金化は60歳まで不可 ・運用機関を個人で選択できない ・受取額が掛金を下回る可能性がある ・実施していない企業もある |
・現金化は60歳まで不可 ・口座の加入・運用に手数料がかかる ・受取額が掛金を下回る可能性がある |
企業型DCとiDeCo(イデコ)の併用の条件
2022年5月、確定拠出年金制度が改正されました。この改正により、労使合意は必要ですが、2022年10月からは原則として企業型DC加入者もiDeCoを利用できるようになり、併用しやすくなっています(※1)。
ただし、企業型DCのマッチング拠出を利用している場合は、iDeCoと併用できないため、マッチング拠出か、iDeCo加入かどちらかを選択する必要があります。
併用する場合の限度額は以下のとおりです。
企業型DCのみ | 企業型DCのほか、確定給付型年金あり | |
会社掛金 | 月55,000円 | 月27,500円 |
iDeCo掛け金 | 月20,000円 | 月12,000円 |
併用するときは、iDeCoの掛金は月20,000円以内、なおかつ企業型DCの掛金との合計額が月55,000円以内となります。企業型DCだけでなく確定給付型年金に加入している場合は、iDeCoの掛金は月12,000円以内、なおかつiDeCoと企業型DCの掛金の合計額が月27,500円以内です(※2)。
なお、2024年12月からiDeCoの拠出限度額が公平化されます。iDeCoと企業型DC、確定給付型年金の各掛金の合計額は月額55,000円以下である点は変わりませんが、iDeCoと企業型DCの掛金の合計額が月額27,500円以内という制限がなくなります(※2)。
また、企業型DCを利用している・いないにかかわらず、iDeCoの掛金の上限は20,000円に統一されます。この見直しにより、iDeCoの掛金上限額が減ることや、iDeCoの枠が5,000円を下回って掛金を拠出できなくなることもあるため、ご注意ください(※3)。
なお、引き出せる年齢は満60歳以上75歳までです。毎月受け取る年金型と、まとめて受け取る一時金型があります(※1)。
(※1)出典:国民年金基金連合会「第9回『法改正でますます拡充 2022年からiDeCoはどう変わる?」」
(※2)出典:厚生労働省「令和4(2022)年10月から企業型DC加入者がiDeCoを利用しやすくなります」
(※3)出典: 国民年金基金連合会「2022年の制度改正の概要」
企業型DCとiDeCo(イデコ)を併用することによるメリット
企業型DCとiDeCoを併用することには、次のメリットがあります。
・税制面で優遇される
・運用金額が増える
・運用期間を長くできる
それぞれのメリットを説明します。
税制面で優遇される
企業型DCは企業側が掛金を拠出しているため、所得控除は利用できません。しかし、掛金は給与として扱われないため、所得税・住民税が非課税になるというメリットがあります。また、マッチング拠出をする場合は、加入者自身が拠出した掛金は全額所得控除となります。
iDeCoは掛金全額が所得控除の対象です。所得税率10%住民税率10%とすると、月2万円の拠出で所得税額24,000円、住民税額24,000円を税制優遇できます(※)。
(※)出典:国民年金基金連合会「iDeCo(イデコ)のイイコト」
運用金額が増える
企業型DCもiDeCoも上限はありますが、併用することで運用金額を増やせます。将来受け取れる年金が増える可能性もあります。
運用期間を長くできる
企業型DCは退職するまでですが、iDeCoは65歳まで運用できるので長期運用が可能です。運用期間が長くなると、税制優遇を受けられる期間も長くなります。
企業型DCとiDeCo(イデコ)を併用することの注意点
企業型DCとiDeCoを併用すること注意点を理解したうえで活用しましょう。
・上限額が決まっている
・運用の手間が増える
・転職の際は手続きが必要になる
それぞれの注意点を説明します。
上限額が決まっている
企業型DCもiDeCoも運用額に上限があるため、併用しても運用額を無制限に増やせるわけではありません。将来受け取れる年金をさらに増やしたいときには、民間の生命保険会社の個人年金保険なども検討してみましょう。
運用の手間が増える
企業型DCもiDeCoも、どちらも自分で運用する私的年金制度です。2つの制度をまとめてひとつの口座で運用できないため、管理の手間が増えます。
転職の際は手続きが必要になる
企業型DCは企業が掛金を拠出しているため、運用中に転職をした場合は移換手続きが必要です。原則として60歳までは現金化できないため、60歳未満で退職した場合、それまでに積み立てた年金資産を転職先の企業型DCもしくはiDeCoに移します。
なお、企業型DCの資格は退職日の翌日に喪失します。移管手続きの期限は資格を喪失する月の翌月から6ヶ月以内のため、忘れずに手続きをしてください。
企業型DCの移換手続きを忘れていると、資金が国民年金基金連合会に自動移換されることもあります。転職時は手続きが多く忙しいですが、企業型DCの手続きも忘れずに実施しましょう。
企業型DCとiDeCo(イデコ)の併用をおすすめする人
iDeCoは税制優遇される額と年金額を増やす優良な制度です。企業型DCの掛金が月55,000円未満の場合、あるいは確定給付型企業年金にも加入しているなら企業型DCの掛金が27,500円未満の場合はiDeCoと併用できます。
併用の条件を満たすときは、iDeCoを利用して、税制優遇できる金額を増やし、将来受け取れる年金も増やしましょう。
企業型DCとiDeCo(イデコ)の商品の選び方
企業型DCもiDeCoも、いずれも自分で運用する必要があるため、商品選びが重要です。次のポイントに注目して運用商品を選択しましょう。
・異なる性質の商品を組み合わせる
・手数料に注目する
・定期的に見直す
それぞれのポイントを説明します。
異なる性質の商品を組み合わせる
積極的な運用を期待できる商品、手堅い運用を期待できる商品など、リスクタイプが異なる商品を組み合わせましょう。異なる性質の商品を組み合わせると、運用リスクを低減しやすくなります。
手数料に注目する
投資信託には手数料(信託報酬)が定められています。信託報酬は運用期間に応じて発生するので、運用期間が長くなりがちな企業型DCとiDeCoにとっては大きな負担になりがちです。できるだけ信託報酬などの手数料が低く設定されている商品を選択するようにしましょう。
定期的に見直す
投資信託は日々価格が変わります。定期的に商品や掛金配分を見直すことで、より良い結果につなげていきましょう。
企業型DCとiDeCoの併用で悩んだらプロに相談してみよう!
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