年金から天引きされるものとは?税金や社会保険料の計算方法を解説
老後の生活について考え、年金をいくらもらえるのか確認する際には、年金から天引きされるものを考慮する必要があります。
老後の生活資金として使えるのは年金の受給額ではなく、税金や社会保険料が天引きされた後の金額です。天引きされるものを考慮し忘れて手取りを勘違いすると、老後の生活資金が想定より少なくて困るかもしれません。
本記事では、年金を受け取るときに天引きされるものが何か、具体的な内容や金額の計算方法を紹介します。
年金から天引きされるものは全部で5つ
年金から天引きされるものは以下の5つです。年金からの天引きが中止されて納付書等を使って自分で納めるケースもありますが、基本的には年金が支払われる際、以下の税金や社会保険料が天引きされます。
- 所得税
- 住民税
- 介護保険料
- 国民健康保険料
- 後期高齢者医療保険料
所得税とは個人の所得に対してかかる税金で、1年間のすべての所得から所得控除を差し引いた残りの課税所得に税率を適用して税額を計算します。
住民税も所得税と同じく1年間の所得に対してかかる税金ですが、所得税は国に納める国税であるのに対して、住民税は住んでいる自治体に納める地方税です。地域の行政サービスを維持・提供するための費用に充てるため、その地域に住んでいる人に住民税が課されます。
住民税の納付先は1月1日に住んでいる自治体で、前年中の年金所得に係る個人住民税の納付義務がある場合、年金から住民税が天引き(特別徴収)されます。
介護保険料とは、介護保険制度の財源を確保するために40歳以上の人から徴収される保険料です。65歳以上の人が介護保険料を納める方法は、基本的には年金から天引きされる特別徴収ですが、納付書等で納める普通徴収によって納める場合もあります。
国民健康保険料は、自営業者や無職の人などが加入する国民健康保険制度の保険料です。普段から国民健康保険料を払うことで、病気やケガで医療費がかかった場合の自己負担が原則3割で済みます。後述する一定の条件に該当する場合、国民健康保険料が年金から天引きされます。
後期高齢者医療制度は、75歳(寝たきり等の場合は65歳)以上の人が加入する医療制度です。それまで国民健康保険や会社の健康保険に加入していた人は、75歳(寝たきり等の場合は65歳)から後期高齢者医療制度の対象になり、後期高齢者医療保険料を納めます。
後期高齢者医療制度の保険料の納付方法には特別徴収と普通徴収の2種類あり、一定の条件に該当する場合には保険料が年金から天引き(特別徴収)されます。
年金は所得のひとつである雑所得として扱われるため、所得税と住民税がかかります。また、日本では国民全員が何らかの公的医療保険制度に加入する国民皆保険制度となっているため、社会保険料を納める義務があります。
税金や社会保険料を納付する場合、納付書を使ってコンビニや金融機関の窓口で納付する方法や銀行のATMで振込む方法なども考えられますが、窓口やATMまで行く手間がかかり、納付を忘れる可能性もあります。
しかし、年金から天引きする方法であれば、納付のために手間がかかったり納付手続きを忘れたりすることはありません。
納付手続きを忘れた人に対して国や自治体が納付勧奨を行う手間を省くこともできるため、税金や社会保険料は原則として、年金から天引きする特別徴収と呼ばれる方法で徴収が行われています。
年金は所得のひとつである雑所得として扱われるため、所得税と住民税がかかります。また、日本では国民全員が何らかの公的医療保険制度に加入する国民皆保険制度となっているため、社会保険料を納める義務があります。
税金や社会保険料を納付する場合、納付書を使ってコンビニや金融機関の窓口で納付する方法や銀行のATMで振込む方法なども考えられますが、窓口やATMまで行く手間がかかり、納付を忘れる可能性もあります。
しかし、年金から天引きする方法であれば、納付のために手間がかかったり納付手続きを忘れたりすることはありません。
納付手続きを忘れた人に対して国や自治体が納付勧奨を行う手間を省くこともできるため、税金や社会保険料は原則として、年金から天引きする特別徴収と呼ばれる方法で徴収が行われています。
天引きが途中で中止になるケースもある
詳しい内容は後述しますが、年金から天引きされるものは年金の受給額が一定額以上の場合に天引きされるため、年金の支払調整等で受給額が少なくなると、基準額を下回って天引きが中止される場合があります。
また、世帯主の転出や死亡等で年金天引きの条件を満たさなくなると、国民健康保険料の天引きが中止される場合や、世帯主が75歳になる年度に国民健康保険料の年金天引きが中止されて納付書等で納める場合もあります。
税金・社会保険料が年金から天引きされる条件と計算方法
冒頭で、年金から天引きされるものとして5つ紹介しましたが、実際には天引きされるケースとされないケースがあり、それぞれ天引きされる人の条件が決まっています。天引きの対象とならない場合は、納付書等を使って自分で納めなければいけません。
以下では天引きの対象となる条件や、天引きされる(または自分で納付する)際の金額の計算方法、途中で条件から外れて天引きが中止されるケースを紹介します。
所得税
一般的に65歳未満の人は年金受給額が108万円以上、65歳以上の人は年金受給額が158万円以上で、それぞれ所得税が年金から天引きされます。
年金にかかる所得税は、年金受給額から公的年金等控除額を引いて所得金額を計算し、所得金額から各種所得控除額を引いて、税率5.105%を掛けて求めた金額です。
年金受給額から公的年金等控除額を引いた額(=公的年金等に係る雑所得の金額)は、国税庁サイトに掲載されている速算表を使えば計算できます(※)。
なお、扶養親族等がいて扶養親族等申告書を提出している場合は、各種控除が適用される結果、年金受給額が108万円や158万円を超えても所得税がかからない場合があります。
(※)出典:国税庁「公的年金等の課税関係」
住民税
年金から住民税が天引きされるのは、4月1日時点で65歳以上の公的年金受給者で、年間の年金受給額が18万円以上、かつ前年の年金所得に対して個人住民税がかかる人です。
所得税はその年の年金所得にかかる税金が天引きされますが、住民税は前年の年金所得にかかる税金が天引きされます。
住民税には所得割と均等割の2種類あり、このうち所得割は所得額に応じて課される税金、均等割は所得額に関係なく一律に課される税金です。
所得割は、年金収入から公的年金等控除額や所得控除額を引いて課税所得金額を求め、税率を適用して計算します。税率は一般的に市町村民税が6%、道府県民税が4%です。
均等割の標準税額は市町村民税3,500円、道府県民税1,500円で、自治体によっては金額が異なる場合があります。
また、これまでは震災の影響にともない均等割の税金が引き上げられていましたが、令和5年度でその徴収が終わり、令和6年度からは新たに森林環境税(国税)が導入されています(※)。
(※)出典:総務省「森林環境税及び森林環境譲与税」
介護保険料
年金から介護保険料が天引きされるのは、65歳以上の人のうち年間の年金受給額が18万円以上の人です。
介護保険料は本人の所得状況等に応じて決まり、住んでいる市区町村によって保険料額は異なります。65歳以上の人が払う介護保険料の月額(2021年~2023年)の全国平均は6,014円です(※)。
自治体サイトに保険料額をまとめた表が掲載されている場合があるため、介護保険料の金額を確認したい場合は、まずはお住まいの自治体のサイトを確認してみてください。
(※)出典:厚生労働省「第8期計画期間における介護保険の第1号保険料について」
国民健康保険料
年金から国民健康保険料が天引きされるのは、65歳以上75歳未満で国民健康保険に加入している人のうち年間の年金受給額が18万円以上の人です。
ただし、国民健康保険料と介護保険料の合計額が年金受給額の2分の1を超える場合、国民健康保険料は特別徴収の対象とはなりません。
国民健康保険料の計算方法や料率は市区町村によって異なります。所得額に応じて金額が決まる所得割額や所得に関係なく課される均等割額など、各市区町村で計算方法が定められています。
後期高齢者医療保険料
年金から後期高齢者医療保険料が天引きされるのは、75歳以上の人もしくは65歳以上75歳未満で後期高齢者医療保険制度に加入している人のうち、年間の年金受給額が18万円以上の人です。
ただし、後期高齢者医療保険料と介護保険料の合計額が年金受給額の2分の1を超える場合、後期高齢者医療保険料は特別徴収の対象とはなりません。
後期高齢者医療保険料の計算方法や料率は都道府県によって異なります。所得額に応じて金額が決まる所得割額の料率や所得に関係なく課される均等割額の金額は、各都道府県の広域連合で定められています。
天引き後の年金の手取り額はいくら?具体的な事例でシミュレーション!
厚生労働省が公表している「厚生年金保険・国民年金事業の概況」によれば、厚生年金の平均受給月額はおよそ14万円です(※1)。
そこで以下では、元会社員で65歳以降に厚生年金を月14万円、1年間で168万円の年金を受け取るケースについて、年金から引かれるものがいくらになるか、シミュレーションを行います。
まず所得税・住民税ですが、年間の年金受給額が168万円のケースだと、公的年金等控除額は110万円、公的年金等に係る雑所得の金額は58万円です。ここから各種所得控除額を引いて税率をかけて税金を計算します。
65歳の夫婦2人暮らしの場合、所得税では基礎控除額48万円・配偶者控除額38万円を合わせた86万円を、住民税では基礎控除額43万円・配偶者控除額33万円を合わせた76万円を、それぞれ所得控除額として差し引きます。
つまり、所得税でも住民税でも所得額58万円より所得控除額が上回ります。所得額から所得控除額を引いた後の金額(=税率をかける金額)がゼロになるため、所得税・住民税はかかりません。
介護保険料・国民健康保険料・後期高齢者医療保険料は地域によって異なるので個別に確認が必要です。
例えば東京都・杉並区の場合、世帯全員が住民税非課税で年金収入が168万円であれば第3段階に該当し、1ヶ月あたり4,540円の介護保険料が年金から天引きされます(※2)。
地域によっては、国民健康保険料や後期高齢者医療保険料の概算額を計算できるシミュレーションサイトが提供されている場合があるので、シミュレーションサイトを使って保険料がいくらかかるのか、確認すると良いでしょう。
(※1)出典:厚生労働省「厚生年金保険・国民年金事業の概要」
(※2)出典:杉並区「介護保険料について」
年金から自動的に天引きされるなら確定申告は不要?
確定申告とは、1年間の所得額と所得税額等を計算して所得税を納めたり、源泉徴収された税金や予定納税で納めた税金などとの過不足を精算したりする手続きです。確定申告の義務は、生じる場合と生じない場合があります。
公的年金等の収入金額の合計額が400万円以下で、その公的年金等のすべてが源泉徴収の対象となる場合、公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下であれば、所得税および復興特別所得税の確定申告は不要です。
2か所以上の年金の支払者に対して扶養親族等申告書を提出している人や年金以外に給与所得がある人は、多くの場合、確定申告をする必要があります。また、確定申告の義務がない場合でも、医療費控除や雑損控除などの適用を受ける場合は確定申告をすることになります。
確定申告することで還付を受けられる場合がある
確定申告の義務が生じない場合でも、あえて確定申告をした方が良い場合があります。例えば以下のようなケースです。
- 医療費がかかって医療費控除を適用する場合
- 災害や盗難にあって雑損控除を適用する場合
- ふるさと納税や寄付をして寄付金控除を適用する場合
医療費控除の適用を受けられるのは、年間で医療費が10万円超かかった人です。ただし、その年の総所得金額等が200万円未満の人は、総所得金額等の5%の金額超の医療費が年間でかかれば、医療費控除の適用を受けられます。
医療費控除を適用できれば、控除額の分だけ税率をかける前の金額が低くなり、税負担が軽くなります。年金から天引きされた税額が医療費控除を適用して計算した税額より多ければ、差額が確定申告によって還付金として払い戻される仕組みです。納税者本人だけでなく、同一生計の配偶者やその他の親族のために支払った医療費も医療費控除の対象です。
雑損控除とは所得控除のひとつで、災害や盗難もしくは横領によって資産に損害を受けた場合に適用できます。納税者本人だけでなく、同一生計の配偶者やその他の親族でその年の総所得金額等が48万円以下の人が資産に損害を受けた場合も雑損控除の対象です。
また、認定NPO法人や公益財団法人、自治体が条例で指定する団体など、控除の対象となる団体に寄付をすると、寄付金控除を受けられます。詳しくは、各団体のホームページをご覧ください。なお、ふるさと納税をして寄付金控除を受ける場合は、所得額により控除限度額が変わるため注意が必要です。
年金に関する相談はauフィナンシャルパートナーへ
働きながら年金を受給する場合、給料と年金でいくらになるのか計算するためには、在職老齢年金や在職定時改定など年金に関する専門的な知識が必要になります。
自分で計算するのが難しい場合は、auフィナンシャルパートナーを活用してはいかがでしょうか。auフィナンシャルパートナーでは、老後資金の相談や資産形成に関するシミュレーションなど、家計の見直しに関する相談を受け付けています。
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まとめ
年金から天引きされるものには5つあり、所得や世帯の状況などによって所得税・住民税・介護保険料・国民健康保険料・後期高齢者医療保険料が天引きされる場合があります。
このうち所得税と住民税は一定の所得がある人に課税される税金なので、所得が少なく所得税・住民税がかからない場合は、年金からの天引きも行われません。社会保険料については、年金受給者の場合、一般的に年金が支払われる際に天引きされます。
老後の生活や年金について考える場合、お金に関する幅広い知識が必要になるため、お金のプロであるFPへの相談がおすすめです。
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