資産形成・老後資金 2023.10.16

個人年金保険で税金はいくらかかる?家計負担額の計算方法や税制優遇について解説

個人年金保険に加入すれば、老後に年金を受け取ることで資金を準備できますが、保険に加入した後には保険料がかかり、年金を受け取る際には税金がかかります。

「年金を受け取ることで得られる資産」と「保険料による税負担」、どちらの影響が大きいか気になる方は多いのではないでしょうか。そこで本記事では、個人年金保険でかかる税金や生命保険料控除による税負担の軽減額の計算方法を解説します。

ご自分にあてはめて、税金がいくらかかって資産がどのように変化するのか、支払う保険料額をもとに計算してみましょう。

個人年金保険に入ると家計負担や資産はどのように変化するのか

個人年金保険に加入すると家計の負担が増えるのか減るのか、考えるためには主に以下の要素を考慮する必要があります。

・家計の負担増となる要素:保険料や税金の支払いが必要となる
・家計の負担減となる要素:老後資金を準備でき、税制優遇措置による税負担の軽減効果の側面もある

以下では、個人年金保険に加入することで生じる家計への影響を解説します。

返戻率が100%を超える場合は資産が増える

返戻率が100%を超える個人年金保険の場合、支払った保険料より大きな金額の年金を受け取れます。

例えば、30歳で個人年金保険に加入して、60歳になるまで30年間に毎月2万円、計720万円の保険料を支払って年金形式で受け取る場合、返戻率が105%であれば720万円×105%で756万円を受け取れます。個人年金保険に加入すると資産が36万円増える計算です。

逆に返戻率が100%未満の個人年金保険に加入すると、支払った保険料総額より少ない金額の年金しか受け取れず資産が減ります。

税制上の優遇がある

個人年金保険の保険料を支払うと生命保険料控除の対象になります。会社員は年末調整で、個人事業主は確定申告で、それぞれ手続きをして生命保険料控除の適用を受けると税負担が軽減される場合があります。

保険期間が5年未満の契約や外国生命保険会社と締結した契約の中には生命保険料控除の対象外になる契約もありますが、一般的には個人年金保険に加入して保険料を支払うと税制上の優遇措置の対象となります。

年金・一時金を受け取るときに税金がかかる

個人年金保険が満期を迎えて年金形式や一時金を受け取る際、税金がかかる場合があります。年金額や一時金額の全額が手元に残るとは限りません。

詳細は後述しますが、年金で受け取る場合と一時金で受け取る場合では税金の計算方法が変わるため、受け取り方によって税金がどのように変わるのか、確認することが大切です。

個人年金保険における生命保険料控除の概要

個人年金保険にかかる税金について考える際、理解するべき知識のひとつが「生命保険料控除」です。以下では、生命保険料控除の概要や必要な手続きを紹介します。

生命保険料控除とは所得税・住民税の所得控除のひとつ

所得税や住民税を計算する際に所得控除の適用を受けられると、税率をかける前の金額が低くなって税負担が軽減される場合があります(※1)。生命保険料控除も所得控除のひとつです。

生命保険料控除には一般生命保険料控除・個人年金保険料控除・介護医療保険料控除の3つがあり、個人年金保険に加入した場合は一般的に個人年金保険料控除の適用を受けられます。

税金を計算する際の控除額は、新契約(平成24年1月1日以後に締結した保険契約)と旧契約(平成23年12月31日以前に締結した保険契約)で異なり、それぞれ以下の式で計算します(※2)(※3)。

<新契約における所得税の控除額>

年間の支払保険料等 控除額
20,000円以下 支払保険料等の全額
20,000円超 40,000円以下 支払保険料等×1/2+10,000円
40,000円超 80,000円以下 支払保険料等×1/4+20,000円
80,000円超 一律40,000円

<新契約における住民税の控除額>

年間の支払保険料等 控除額
12,000円以下 支払保険料等の全額
12,000円超 32,000円以下 支払保険料等×1/2+6,000円
32,000円超 56,000円以下 支払保険料等×1/4+14,000円
56,000円超 一律28,000円

<旧契約における所得税の控除額>

年間の支払保険料等 控除額
25,000円以下 支払保険料等の全額
25,000円超 50,000円以下 支払保険料等×1/2+12,500円
50,000円超 100,000円以下 支払保険料等×1/4+25,000円
100,000円超 一律50,000円

<旧契約における住民税の控除額>

年間の支払保険料等 控除額
15,000円以下 支払保険料等の全額
15,000円超 40,000円以下 支払保険料等×1/2+7,500円
40,000円超 70,000円以下 支払保険料等×1/4+17,500円
70,000円超 一律35,000円

(※1)保険期間が5年未満の生命保険などのなかには、控除の対象とならないものもあります
(※2)出典:国税庁「No.1140 生命保険料控除」
(※3)出典:公益財団法人生命保険センター「Q.生命保険料控除制度とは?」
上記資料を元に筆者が表を作成

控除の適用には年末調整や確定申告で手続きが必要

個人年金保険に加入して保険料を支払った場合、自動的に生命保険料控除が適用されて税金の計算で考慮されるわけではありません。控除の適用を受けるには手続きが必要です。

会社員や公務員の場合は勤務先で年末調整をする際に控除の適用を申請します。保険会社から保険料控除証明書が届くので、証明書に記載された金額を年末調整書類に記入して提出しましょう。

個人事業主の場合は確定申告で控除の適用を申請します。確定申告の期間は2月16日から3月15日までの1ヶ月間です。保険料控除証明書を手元に準備して、確定申告書に保険料額や控除額を記入してください。

なお、会社員や公務員の場合、個人年金保険に加入した時期によっては保険料控除証明書が保険会社から届く時期が遅くなり、年末調整に間に合わない場合があります。しかしその場合でも、自分で確定申告をすれば生命保険料控除の適用を受けられます。

個人年金保険の年金・一時金に税金はいくらかかる?

個人年金保険に加入して年金や一時金を受け取る場合、契約者と受取人が同じ場合と違う場合では税金の種類や計算方法が変わります。以下では、ケースごとに税金の計算方法を解説します。

契約者と受取人が同じ場合は所得税(雑所得・一時所得)の対象

契約者が保険料を支払って自分で年金や一時金を受け取る場合は所得扱いとなり、所得税と住民税の課税対象となります。

所得税と住民税の計算では所得の性質に応じて税金の計算方法が変わりますが、年金で受け取る場合は雑所得に、一時金で受け取る場合は一時所得になります。

・雑所得の金額 = その年に受け取った年金額 - その金額に対応する支払保険料額
・一時所得の金額 = 受け取った保険金額 - 支払保険料額 - 特別控除額

一時所得を計算する際の特別控除額は、「受け取った保険金額 - 支払保険料額」が50万円未満の場合はその金額、50万円以上の場合は50万円で、課税対象になるのは上の計算式で求めた金額の2分の1の金額です。

雑所得・一時所得のいずれの場合も、ほかの所得と合算して所得額を求め、税率をかけて税額を計算します。

契約者と受取人が違う場合は贈与税・所得税の対象

契約者と受取人が違う場合は、保険料を支払った契約者から年金や一時金を受け取る受取人への贈与扱いとなり、贈与税の課税対象となります。このように、上述の「契約者と受取人が同じ場合」とは課税される税金の種類が変わります。

また、贈与税の課税対象になるのは年金を受け取り始めた最初の年だけで、2年目以降は所得税(雑所得)の課税対象です。贈与税は以下の式で計算します。

・贈与税 = (1年間の贈与額 - 基礎控除額110万円) × 税率 - 控除額

贈与税の税率は「贈与額から基礎控除額110万円を引いた金額」に応じて変わり、国税庁のWEBサイト「贈与税の計算と税率(暦年課税)」で確認できます。

例えば、夫が契約者で妻が受取人、年金受給権の評価額が2,000万円で税率50%の場合、贈与税は以下のように計算されます。

・(2,000万円 - 110万円) × 50% - 250万円 = 695万円

複数年に分けて年金形式で受け取る場合、最初の年に受け取る年金額が100万円や200万円だったとしても、翌年の贈与税の申告期間中に695万円を納税する必要があります。受取人が納税資金を準備できず困る場合があるため注意が必要です。

税金・資産の変化をシミュレーションしよう!計算事例を紹介

次に、以下のケースで税金がいくらかかって資産がどのように変化するのか、シミュレーションを行います。

【事例】
・保険内容:個人年金保険(新契約)に加入
・保険料:1万円/月
・保険料支払期間:30年
・保険料払込期間中の税率:所得税5%、住民税10%
・返戻率:105%
・受取方法:一時金で受け取り%

この事例では、毎月1万円、年12万円の保険料負担が生じますが、30年間で360万円の保険料を支払うと105%にあたる378万円の一時金を受け取れるため、資産が18万円増えます。

生命保険料控除の適用による控除額は所得税が年4万円、住民税が年2.8万円です。保険料を支払う30年間で得られる税負担の軽減効果は以下のように計算できます。

・所得税 = 4万円 × 5% × 30年 = 6万円
・住民税 = 2.8万円 × 10% × 30年 = 8.4万円
・税負担軽減額 = 6万円 + 8.4万円 = 14.4万円

そして一時金で受け取る際、所得税(一時所得)の課税対象になります。一時所得の計算式は以下のとおりです。

・所得税(一時所得) = 378万円 - 360万円 - 特別控除額

前述のとおり、特別控除額は最大50万円です。この事例では(ほかに一時所得に分類される所得がなければ)一時金を受け取っても税金を計算する際の一時所得はゼロになり、所得税や住民税はかかりません。

年金を受け取ると資産が18万円増え、税負担の軽減効果が14.4万円あるため、家計には合計で32.4万円のプラスの効果が生じます。

なお、保険会社の商品パンフレットなどには、「年金受取で10●%超、一括受取だと元本を下回る」といった記載があることも多いため、そのような注記があるかどうか、確認するのを忘れないようにしてください。

個人年金保険における注意点

個人年金保険に加入する際、税金に関して注意すべき点がいくつかあります。以下では主な注意点を紹介します。

契約者と受取人の関係や受け取り方で税金が変わる

契約者と受取人の関係や受け取り方によって税金の種類や計算方法が変わるため、あらかじめシミュレーションして税額を比較・確認することが大切です。

個人年金保険では、ご自分やご家族の状況、思い描く老後の生活などを踏まえて保険契約の内容を決めることが重要ですが、税金についても考慮すれば、税負担を軽減できて納税後の手取りや老後の生活資金を増やせる場合があります。

保険料を一時払で払うと保険料控除が1年しか適用されない

保険料をまとめて一度で支払うと、各年に分けて支払うより割安になる場合がありますが、保険料を支払った年にしか生命保険料控除を適用できない点に注意が必要です。

例えば、新契約では所得税の計算で最大4万円の控除が適用されます。保険料を30年間に分けて支払うなら30年の各年について最大4万円の控除が適用されますが、一括で支払うと1年しか適用されません。

このように、各年に分けて支払う場合より税負担の軽減効果が小さくなり、実質的に負担が増える場合があることも理解しておきましょう。

個人年金保険に関する相談はauフィナンシャルパートナーがおすすめ

個人年金保険に加入する場合、公的年金に加えて個人年金保険でどれくらいの老後資産を準備すべきか、受け取り方によって税金がどのように変わるのか、さまざまな視点で検討を行う必要があります。

専門的な知識が必要になるため、個人年金保険に関する相談はお金のプロであるFPへの相談がおすすめです。

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※ご相談は実際にお会いする形で実施します。お電話、オンライン面談の形式では行っておりません。

まとめ

個人年金保険でかかる税金の種類や計算方法は、契約者と受取人の関係や年金・一時金のいずれの方式で受け取るのかによって変わります。

税金が変われば、納税後に手元に残って老後の生活資金として使える金額が変わるため、個人年金保険に加入する際には税金も考慮に入れて検討を行いましょう。

老後の生活資金を準備するために個人年金保険への加入を検討する場合、お金に関する幅広い知識が必要になるので、お金のプロであるFPへ相談してはいかがでしょうか。

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執筆者名:
大木 ゆうすけ
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