資産形成・老後資金 2023.3.31

iDeCo(イデコ)をはじめるには会社に書類申請が必要!企業が応じない場合の対処法を解説

iDeCo(イデコ)は私的年金制度ですが、会社員である場合には会社に申請が必要です。

このことは、2023年4月現在法律上で定められているため、残念ながら「知人に代筆してもらって秘密裏に……」とはいきません。

年々加入者が増え、知名度も高まっているiDeCoですが、導入に対して非積極的な会社もまだ少なくありません。iDeCoをはじめるために必要な書類を「頼んでも書いてくれない」ケースもあります。

そこで本記事では、iDeCoをはじめるときに「なぜ会社に申請が必要なのか」を解説するとともに、「会社が必要書類を書いてくれないときの対策」をまとめました。

会社への申請、および会社が必要書類を書いてくれない場合の対応に悩んでいる方は、ぜひご一読ください。

iDeCo(イデコ)をはじめるうえで会社に書類申請が必要な理由とは?

会社員がiDeCoをはじめるときには、「事業主の証明書」を書いてもらうため、会社に申請が必要です。ここではその理由をわかりやすく解説します。

会社として事業所登録が必要

iDeCoの加入者である従業員を雇っている会社は、「国民年金基金連合会(国基連)」に事業者登録をしなくてはいけないと法律上で定められています(2023年4月現在)。

iDeCo加入者が加入条件を満たしているかどうかは、加入時だけでなく1年単位で確認する必要があるため、確認の手続き上、事業者登録が欠かせません。

企業年金制度の加入状況の共有が必要

iDeCoの掛金上限額は企業年金制度との兼ねあいによって異なるため、加入条件の確認だけではなく、上限額設定のためにも加入状況の共有が会社に求められます。

下表は、会社員向けのiDeCoの掛金上限額をまとめたものです。参考までにご覧ください(※)。

企業年金制度の加入状況 iDeCoの掛金上限額
未加入 年額27.6万円(月額2.3万円)
企業型確定拠出年金(企業型DC)のみ加入 年額24万円(月額2.0万円)
企業型確定拠出年金(企業型DC)以外に加入 年額14.4万円(月額1.2万円)

(※)出典:厚生労働省「事業主による事務手続きが必要となります」をもとに筆者作成

iDeCo(イデコ)をはじめるときに必要な書類

会社員がiDeCoに加入申し込みをする際は、「個人型年金加入申出書」と「事業所登録申請書 兼 第2号加入者に係る事業主の証明書」の二つの書類が必要です。

ここではそれぞれの書類について、書き方および会社に書いてもらう必要がある箇所を解説します。

なお、各書類の入手方法は、iDeCoを取り扱う金融機関のなかから好きな機関を選んで資料請求をし、資料とともに申込書類を郵送してもらうのが一般的です。

個人型年金加入申出書

「個人型年金加入申出書」は、主にiDeCoの加入希望者本人が記入する申込書類です。記入内容は、以下をご確認ください(※)。

・本人情報(名前、生年月日、性別、住所、連絡先電話番号、基礎年金番号)
・被保険者の種別(会社員なら「第2号被保険者」にレ点でチェック)
・掛金の納付方法(個人払込or事業主払込)
・掛金の引落口座情報(個人払込を選択した場合は本人が、事業主払込を選択した場合は会社が記入)
・掛金額区分(限度額内で毎月の希望掛金額を記入)
・会社情報(会社名、登録事業所番号、企業年金制度の加入状況)

注意点として、まず掛金の納付方法は「個人払込」を選ぶのが一般的です。事業主払込を利用するには会社側で体制を整える必要があるため、iDeCoの導入に積極的な企業以外ではiDeCoをはじめる障壁になる場合があります。

そのほか会社情報に関しては、「事業所登録申請書 兼 第2号加入者に係る事業主の証明書」に同様の情報を記入する箇所があるため、そちらを確認のうえ記入するとよいでしょう。

(※)出典:iDeCo公式サイト「加入手続きについて 個人型年金加入申出書」

事業所登録申請書 兼 第2号加入者に係る事業主の証明書

「事業所登録申請書 兼 第2号加入者に係る事業主の証明書」は、一部をiDeCo加入希望者本人が記入したうえで、会社に記入を依頼します。担当部署は、会社の総務部や人事部であることが多いです。

本人が記入しなくてはいけない記入欄と内容は、以下をご確認ください(※)。

・本人情報(名前、基礎年金番号、掛金の納付方法)
・掛金額区分
・業型確定拠出年金の加入状況(企業型確定拠出年金に加入している場合には、内容を確認のうえレ点でチェック)

こちら以外の欄はすべて会社の記入箇所です。

(※)出典:iDeCo公式サイト「事業主の方へ

会社の理解が足りない場合やiDeCo(イデコ)加入を知られたくない場合の対処法

「iDeCoハラスメント」という言葉が生まれるほど、iDeCoを認知していない会社は少なくありません。

事業主証明書の記入を依頼しても、会社に拒否されてしまうケースがあります。

しかし、従業員がiDeCoの加入を希望した場合、会社は必要な協力をするように努めるべきということは、法律で定められています(2023年4月現在)。

事業主証明書の記入を拒否されたとしても、交渉の余地は十分にあるといえるでしょう。そこで、具体的な交渉方法を解説します。

また、交渉しても会社が書類を用意してくれない場合や、会社に知られたくない場合には法改正を待つのもひとつの手段であることを押さえておきましょう。

法改正の詳細については後述します。

会社が必要書類を書いてくれない場合は法律の内容を伝える

必要書類を書いてもらうためには、まず法律の内容を伝えたうえで交渉するのがよいでしょう。

iDeCoに関する法律は、「確定拠出年金法」の第七十八条にて「個人型年金についての事業主の協力等」として、下記のように示されています(※)。
『(個人型年金についての事業主の協力等)

第七十八条 厚生年金適用事業所の事業主は、当該厚生年金適用事業所に使用される者が個人型年金加入者である場合には、当該個人型年金加入者に対し、必要な協力をするとともに、法令及び個人型年金規約が遵守されるよう指導等に努めなければならない。

2 前項の場合において、国は、厚生年金適用事業所の事業主に対し、必要な指導及び助言を行うことができる。』
こちらを提示して、会社の判断によりiDeCoへの加入が妨げられることはあってはならないことを主軸に交渉しましょう。

また担当者がiDeCoの仕組みを理解していないようであれば、書類の書き方をはじめ「会社側に大きな手間はかからない」ことをアピールするのもよい方法です。

(※)引用ː厚生労働省「確定拠出年金法 第三章 個人型年金 第六節 雑則」

iDeCo(イデコ)加入を会社に知られたくない場合は会社への書類申請が不要になるのを待つ

iDeCoへの加入に関する会社の協力は法律で定められているとはいえ、あくまで努力義務ですので、簡単には承諾してもらえない場合もあるでしょう。

無理に書類記入を交渉してその後の仕事に影響するのが嫌だという方や、どうしても会社にiDeCo加入を知られたくないという方は、法改正を待つことを検討しましょう。

現在、国民年金基金連合会では2024年12月以降を目安に、加入要件から「事業主証明書の提出」を廃止する方向で話が進められています(※)。

法改正にともない、企業年金制度の加入状況を国民年金基金連合会が把握できるようになり、会社と連携を取る必要がなくなるためです。

しかしiDeCoは、運用期間が長いほど運用益を得やすい複利運用型の年金制度です。少しでも早くにはじめた方がお得であることも踏まえたうえで、どのように対処するか検討することをおすすめします。

(※)出典:iDeCo公式サイト「2022年の iDeCo制度改正について」

iDeCo(イデコ)加入について不安がある場合は専門家に相談するのがおすすめ

iDeCoをはじめるには、少なくとも現段階(2023年5月時点)では会社に書類申請が必須です。

なかには書類申請に関して心理的負担を感じ、「iDeCo加入をあきらめようか」と考えてしまう人もいるかもしれません。

しかし、iDeCoは掛金の全額が所得控除になることや、運用益が運用中は非課税、受取時にも公的年金等控除または退職所得控除の対象になるというメリットもあるため、そこで加入をあきらめるのはもったいないといえます。

物価が上昇しているのに対して給与が上がらない現代は、ただ働いているだけでは老後資金の準備が難しい時代です。iDeCoをはじめ、老後資金の準備に役立つ制度は積極的な活用をおすすめします。

「本当にiDeCoはお得なの?」「自分にあう年金制度なのかな?」などの不安や不明瞭なことがあるのなら、お金のプロであるauフィナンシャルパートナーに相談しましょう。

auフィナンシャルパートナーでは、無料でご相談を承っております。そして、家族構成や家計の状況を基に、一人ひとりにあわせたオーダーメイドのアドバイスを実施。年金制度に関する知識がない方でも、安心してご相談いただけるでしょう。

なお、iDeCoについてもっと詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。

まとめ

iDeCoの利用開始は、本来であればそれほど難しいことではありません。

会社に申請が必要であることから、会社のiDeCoに対する理解度が低い場合には、必要書類を書いてもらえずあきらめる原因になるかもしれません。

老後の資産形成のためにも、「書類の書き方は難しくない」「記入にはそこまで時間がかからない」など、簡単にできる点をアピールし、書類を書いてもらえるよう根気強く会社側に交渉してみましょう。

老後にどのくらいの資金が必要なのか、iDeCoでどのくらいの資金を準備できるのか、iDeCo以外にも資産形成の手段はあるのかなど、お金に関する疑問がある場合は、auフィナンシャルパートナーにご相談ください。

執筆者名:
三浦 仁実
Twitter Facebook はてなブックマーク
Twitter Facebook はてなブックマーク

カテゴリ別人気ランキング

  • 家計見直し・教育資金
  • 住宅ローン
  • 保険見直し
  • 資産形成・老後資金

家計見直し・教育資金

住宅ローン

保険見直し

資産形成・老後資金

プロへの無料相談