老後の資金はいくら必要?年金だけで生活できるのか、独身・夫婦に分けて解説

老後の資金がいくら必要なのかよく考えないまま老後を迎えると、生活資金が足りず困ってしまう可能性があります。年金収入だけでは足りない場合は、貯蓄や資産運用によって老後資金を準備しておかなければいけません。実際に老後を迎えてから慌てないように、老後の資金について早くから考えて対策を講じることが大切です。
本記事では、老後の資金がいくら必要になるのか、単身世帯と二人世帯にわけてケースごとに解説します。必要な貯蓄額の計算方法も紹介するので、自分や家族の状況を踏まえていつからいくら貯蓄すべきなのか、計算してみましょう。
- 老後の生活資金はいくら必要?
- 単身世帯の場合
- 二人世帯の場合
- 老後の資金は年金だけでは足りない?年金受給額の平均はいくら?
- 単身世帯の場合
- 二人世帯の場合
- 老後の資金として必要になる貯蓄額の計算方法
- 60歳以上の人は実際いくら貯めている?
- 単身世帯の場合
- 二人世帯の場合
- 老後の資金を準備するときの考え方
- 老後への備え方は年齢やライフステージによって変わる
- 持ち家と賃貸では必要資金の額が変わる
- 退職金・満期保険金をはじめとした大きな収入や支出も考慮する
- 老後資金の準備の方法
- 毎月一定額を貯蓄する
- 個人年金保険などの保険を利用する
- 資産運用によって資金を増やす
- 【年代別】老後資金の備え方
- 【20代・30代】定期貯金・iDeCoをはじめる
- 【40代】老後資金の計画を立てる
- 【50代】積極的に資産運用に取り組む
- 老後資金の相談はauマネープラン相談(家計見直し相談)へ
- まとめ
老後の生活資金はいくら必要?
老後の生活費は単身世帯と二人世帯で異なります。老後の備えをする場合、自分の状況にあわせて検討することが大切です。以下では、老後の生活資金としていくら必要になるのか、単身世帯と二人世帯それぞれの平均的な生活費を紹介します。
単身世帯の場合
総務省統計局の調査結果によると、「65歳以上の単身無職世帯」では消費支出の平均は145,430円、非消費支出の平均は12,243円です。65歳以上の単身無職世帯では、両者をあわせて月々157,673円の生活費がかかっています(※)。
65歳以上単身世帯の消費支出(※)
消費支出 | 月平均額 |
食費 | 40,103円 |
住居 | 12,564円 |
光熱・水道 | 14,436円 |
家具・家事用品 | 5,923円 |
被服及び履物 | 3,241円 |
保健医療 | 7,981円 |
交通・通信 | 15,086円 |
教育 | 0円 |
教養娯楽 | 15,277円 |
その他 | 30,821円 |
非消費支出 | 12,243円 |
非消費支出 | 金額 |
直接税 | 6,437円 |
社会保険料 | 5,799円 |
(※)出典:総務省統計局「家計調査年報(家計収支編)2023年(令和5年)家計の概要」を元に作成
二人世帯の場合
総務省統計局の調査結果によると、「65歳以上の夫婦のみの無職世帯」では消費支出の平均は250,959円、非消費支出の平均は31,538円となっています。
消費支出とは、普段の生活で必要な商品やサービスを購入して払ったお金などのことで、非消費支出とは、税金や社会保険料など世帯の自由にならない支出などのことです。65歳以上の夫婦のみの無職世帯では、両者をあわせて月々282,497円の生活費がかかっています(※)。
65歳以上二人世帯の消費支出(※)
消費支出 | 月平均額 |
食費 | 72,930円 |
住居 | 16,827円 |
光熱・水道 | 22,422円 |
家具・家事用品 | 10,477円 |
被服及び履物 | 5,159円 |
保健医療 | 16,789円 |
交通・通信 | 30,729円 |
教育 | 5円 |
教養娯楽 | 24,690円 |
その他 | 50,839円 |
非消費支出 | 金額 |
直接税 | 13,090円 |
社会保険料 | 18,435円 |
(※)出典:総務省統計局「家計調査年報(家計収支編)2023年(令和5年)家計の概要」を元に作成
老後の資金は年金だけでは足りない?年金受給額の平均はいくら?
老後の年金受給額は単身世帯と二人世帯で変わります。以下ではそれぞれの世帯における年金受給額の平均値をご紹介します。
単身世帯の場合
単身世帯の場合、65歳以降に受け取る年金額は会社員の場合と自営業者の場合で異なります。年金額の平均は前述のとおりで、会社員で厚生年金に加入しているなら月144,982円、自営業者で国民年金に加入しているなら満額で月68,000円です(※1)(※2)。
さきほどご紹介したように、65歳以上の単身無職世帯では月々157,673円の生活費がかかるので、会社員では月々12,691円、自営業者だと月々89,673円の生活費が不足します(※3)。
ただし、厚生年金の年金額は働いているときの給料で変わり、国民年金の年金額は保険料の免除期間や未納期間の有無などで変わります。厚生年金を受け取る人でも年金収入だけでは老後の生活資金が不足する場合があるので注意が必要です。
(※1)出典:厚生労働省「令和6年度の年金額改定についてお知らせします」
(※2)出典:厚生労働省「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
(※3)出典:総務省統計局「家計調査年報(家計収支編)2023年(令和5年)家計の概要」
二人世帯の場合
厚生労働省の「厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、2022年度末における厚生年金(老齢給付)の平均年金月額は144,982円です(※1)。また2024年度の国民年金の年金額は満額で月額68,000円となっています(※2)。夫が会社員で厚生年金を受け取り、妻が専業主婦で国民年金を受け取る場合、両者を合計した受取額は212,982円です。
前述のとおり、65歳以上の夫婦のみの無職世帯では月々282,497円の生活費がかかるので、差額69,515円だけ毎月の生活費が不足します(※3)。
実際に受け取る年金額や老後の生活費は世帯ごとに異なりますが、老後に生活資金が不足するのであれば、老後を迎える前に貯蓄をしたり老後も働いて収入を得て不足額をカバーしたりするなど、何らかの対策が必要になります。
(※1)出典:厚生労働省「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
(※2)出典:厚生労働省「令和6年度の年金額改定についてお知らせします」
(※3)出典:総務省統計局「家計調査年報(家計収支編)2023年(令和5年)家計の概要」
老後の資金として必要になる貯蓄額の計算方法
例えば、先ほどの「家計調査年報(家計収支編)2023年(令和5年)Ⅱ総世帯及び単身世帯の家計収支」65歳以上の夫婦のみの無職世帯のデータを参照してみます。65歳から20年間とすると、老後に必要な資金は以下のとおりです。
年金のみで考えますので社会保障給付から生活費を差し引きます。
・(社会保障給付-(消費支出+非消費支出))×20年間=老後に必要な資金
こちらを元に計算してみます。
(212,982円-(250,959円+31,538円)×12ヶ月×20年=16,683,600円(※1)
年金だけで生活すると約1,700万円必要となる計算です。また、前提として毎月の生活費が約28万円かかっていますが、家庭によってはもう少し生活費を抑えることも可能だと考えられます。
ちなみに、老後2,000万円問題の発端となったのが、金融庁が発表した金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」です。こちらの資料によれば、高齢夫婦の無職世帯は毎月約5万円の赤字になると想定されています。
そのため、毎月約5万円の赤字が20年続けば約1,300万円、30年で約2,000万円必要と考えられているのです(※2)。
このように、金融庁の報告では老後資金はおよそ2,000万円程度必要とされていますが、家庭によって生活費は大きく異なりますので一概に2,000万円必要と断定するのは難しいでしょう。
(※1)出典:総務省統計局「家計調査年報(家計収支編)2023年(令和5年)家計の概要」
(※2)出典:金融庁「金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書 高齢社会における資産形成・管理」
60歳以上の人は実際いくら貯めている?

あらかじめ貯蓄をしておけば老後の資金として必要な額をまかなえますが、実際の貯蓄額はいくらくらいなのでしょうか?以下では、年金生活者もしくは間もなく年金を受給しはじめる世代である60歳以上の人の貯蓄額についてご紹介します。
単身世帯の場合
金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査](令和5年)」によると、60代が世帯主の世帯における金融資産保有額の平均は1,468万円、預貯金の平均は637万円です。60代の預貯金は、40代の平均値275万円、50代の平均値510万円に比べると増えています(※)。
しかし、例えば毎月の生活費が14万円、公的年金の受給額が月10万円なら、65歳から85歳までの20年間にかかる年金で足りない生活費の合計額は「(14万-10万円)×12ヶ月×20年=960万円」となり、平均的な預貯金額637万円では足りません。
平均的な預貯金額を元にシミュレーションしてみると、老後の生活資金が不足すると考えられるので、老後に困らないようにするためには、早くから資産形成を行って資金を用意しておくことが重要といえます。
(※)出典:金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査](令和5年)」
二人世帯の場合
金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和5年)」によると、60代の金融資産保有額の平均は2,026万円、預貯金の平均は885万円です。生活費に充てるため取り崩すことも考えられる預貯金は、40代の平均値361万円、50代の平均値472万円に比べると60代ではほぼ倍に増えています(※)。
しかし、前述の事例では、老後の月々の生活費が25万円、年金収入が月15万円だと、65歳から85歳までの20年間に不足すると考えられる生活費の合計は「(25万-15万円)×12ヶ月× 20年=2,400万円」です。平均的な預貯金額885万円では足りません。
勤めている会社を定年退職する際、差額を埋めるだけの退職金をもらえる場合は良いでしょうが、そうでない場合は老後の資産が不足します。
(※)出典:金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和5年)」
老後の資金を準備するときの考え方
老後の資金にいくら必要になるのか、用意すべき金額は自分や家族の状況によって変わり、老後の理想の過ごし方や考え方によっても変わります。自分や家族が望む形で老後の生活を送るためにも、老後の資金について考える際にはポイントを押さえたうえで準備することが大切です。
老後への備え方は年齢やライフステージによって変わる
例えば20代は収入が少なく、貯蓄に回す余裕がない人もいるので、老後を意識して無理に貯蓄をすると、生活費として今使える金額が減って生活に支障が出る可能性があります。老後の生活を優先するあまり今の生活で困っては問題なので、老後への備えは無理のない範囲で行いましょう(※)。
また、結婚や出産などを経てライフステージが変化すれば、そのときどきの生活費が変わり、結果として老後への備えとして貯蓄に回せる金額も変わります。家族が増えて生活費が増えた場合や、ライフステージの変化にあわせた保険の見直しにより保険料が高くなった場合など、今の支出が増えて貯蓄に回せる金額が減る場合もあるので、ライフステージが変化するタイミングではライフプランの見直しを行うようにしてください。
(※)出典:「国民年金基金連合会Lesson5 | 老後のお金のギモン全部お答えします」
持ち家と賃貸では必要資金の額が変わる
賃貸の場合は毎月家賃がかかるため、老後の資金にいくら必要なのか考える際には月々の生活費に家賃を含める必要があります。一方で持ち家の場合は、家賃はかからないものの住宅ローンの支払いや固定資産税や修繕費をはじめとした維持費がかかります。
持ち家と賃貸では必要資金の額が変わるので、老後の生活費を見積もる際には、自分が想定している老後の生活の仕方にあわせて考えるようにしてください。
退職金・満期保険金をはじめとした大きな収入や支出も考慮する
老後の生活資金にいくら準備する必要があるのか、計算する際に大きな収入や支出を考慮し忘れると必要額が正しく算出されないので、退職金や満期保険金、リフォーム費用や子・孫の世代への教育資金・住宅資金の贈与など、大きな収入や支出が予定されている場合は考慮に入れるようにしてください。
老後資金の準備の方法
老後の資金がいくら必要なのか、シミュレーションをして老後資金が不足することがわかった場合、老後を迎える前に準備する必要があります。以下では老後資金を準備する方法をいくつかご紹介します。
毎月一定額を貯蓄する
毎月の給料のうち一定額を銀行預金で貯めるようにすれば老後資金を準備できます。個人年金保険やiDeCoと違い、銀行預金であれば途中で引き出すことができるので、万が一大きな病気をして医療費が必要になった場合でも柔軟に対応できる点がメリットです。
例えば65歳を迎える時点で1,000万円を貯蓄しておきたい場合、39歳~64歳の25年間で貯めるなら年間の必要貯蓄額は40万円、月々の必要貯蓄額はおよそ3.3万円と計算できます。
個人年金保険などの保険を利用する
個人年金保険に加入して、毎月保険料・掛金を払って積み立てることでも、老後資金を準備できます。毎月自動的に保険料・掛金が引落されれば、貯蓄が苦手な人でも老後に備えて着実に資産を積み立てることができます(※)。
(※)出典:厚生労働省「私的年金制度の概要(企業年金、個人年金)」
資産運用によって資金を増やす
株式や投資信託といった商品への投資により老後資金を準備することも選択肢のひとつです。低金利下に預貯金だけでは元本を大幅に増やすことは難しいですが、資産運用することで老後の生活資金を準備できる可能性があります。
ただし、資産運用では損失が出て資産が減るリスクもあります。老後資金が大きく減るようなリスクは避けたいため、ハイリスク・ハイリターンな運用は慎重に検討することをおすすめします。
NISA
非課税制度のNISAを活用して、資産運用する方法もあります。通常、金融商品から得られる利益には20.315%の税金が課せられますが、NISA口座で運用した金融商品によって得られる利益は非課税となるため、効率性の高い運用が可能です。
iDeCo
iDeCoも運用益が非課税になる制度です。また、運用時には掛金が全額所得控除になるだけでなく、受取時には公的年金等控除や退職所得控除が適用されるため、税制上のメリットもあります。
【年代別】老後資金の備え方
老後資金を準備するなら、できれば早い時期から取り組むことがおすすめです。年代別に老後資金に備える方法を紹介します。
【20代・30代】定期貯金・iDeCoをはじめる
早い時期から資産運用をはじめることで、運用期間が長くなり、増やしやすくなります。20代・30代はマイホームの購入を考える方も多いです。マイホームにかかる資金も考慮しつつ、無理のない範囲で定期貯金やiDeCoをはじめてみてはいかがでしょうか。
また、NISAを活用して投資信託を運用するのもおすすめです。従来のNISAには非課税で運用できる期間に上限(通常のNISAは5年、つみたてNISAは20年)がありましたが、2024年にはじまった新しいNISAは無期限で非課税が適用されます。20代・30代のタイミングで開始すると非課税適用期間も長くなり、よりいっそうNISAを活用できます。
【40代】老後資金の計画を立てる
40代になると、家族構成やライフスタイルもある程度は確立するため、老後資金の計画を立てやすくなるのではないでしょうか。
子どもがいる場合は教育費なども踏まえて、老後資金の計画を立ててください。また、日々の支出を抑えることも大切です。
【50代】積極的に資産運用に取り組む
子どもがいる場合なら、50代になると教育費を支払う時期も終わりに近づくかもしれません。子どもの教育や養育にかかる支払いが終わったあとは、より一層、積極的に資産運用に取り組めるでしょう。
また、個人年金保険や非課税制度以外の投資などをはじめるのにも、適したタイミングです。どのような老後生活を送りたいのか考え、必要な資金を準備していきましょう。
ただし、50代からの資産運用は運用期間が短いため、リスク許容度に応じた方法を選択することが必要です。すでに十分な老後資金を貯めている場合なら、必要な金額を失わないように注意しつつ、元本が保証される可能性が高い定期預金や国債といったローリスクの方法を検討できます。
一方、まだ老後資金が十分に貯められていない場合は、すでにある資金を減らさないように注意することも大切ですが、ある程度リスクをとった方法に挑戦してみることもひとつの方法です。株式や投資信託といった元本が保証されない方法も、検討してみてはいかがでしょうか。
老後資金の相談はauマネープラン相談(家計見直し相談)へ
老後の資金としていくら必要なのか、計算するときにはさまざまな要素を考慮する必要があります。auフィナンシャルパートナーのauマネープラン相談(家計見直し相談)であれば、老後資金の相談や資産形成に関するシミュレーションなど、家計の見直しに関する相談が可能です。
お金のプロであるFP(ファイナンシャルプランナー)が一人ひとりに合わせたキャッシュフロー表を作成し、お金に関するお悩み解決をサポートしてくれます。
まとめ
老後の資金としていくら必要になるのか、老後への備えは自分や家族の置かれた状況によって変わります。どのような老後生活を送りたいのか、具体的にイメージしたうえで老後の生活費を見積り、年金収入だけではいくら足りなくなるのか試算してみましょう。
老後のライフプランを考える場合や生活費のシミュレーションを行いたい方は、お金のプロであるFPに相談することも検討してみてください。auフィナンシャルパートナーのauマネープラン相談では老後資金の相談や資産形成に関するシミュレーションを無料で行っています。お気軽にご相談ください。
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