資産形成・老後資金 2023.10.13

老後の資金はいくら必要?年金だけでは生活できない?貯蓄額目安の計算方法を解説

老後の資金がいくら必要なのかよく考えないまま老後を迎えると、生活資金が足りず困ってしまうことがあります。年金収入だけでは足りない場合は、貯蓄や資産運用によって老後資金を準備しておかなければいけません。実際に老後を迎えてから慌てないように、老後の資金について早くから考えて対策を講じることが大切です。

この記事では、老後の資金がいくら必要になるのか、単身世帯と二人世帯にわけてケースごとに解説します。必要な貯蓄額の計算方法も紹介するので、自分や家族の状況を踏まえていつからいくら貯蓄すべきなのか、計算してみましょう。

老後の生活資金はいくら必要?

老後の生活費は単身世帯と二人世帯で異なります。老後の備えをする場合、自分の状況にあわせて検討することが大切です。以下では、老後の生活資金としていくら必要になるのか、単身世帯と二人世帯それぞれの平均的な生活費を紹介します。

単身世帯の場合

総務省統計局の調査結果によると、「65歳以上の単身無職世帯」では消費支出の平均は132,476円、非消費支出の平均は12,271円です。65歳以上の単身無職世帯では、両者をあわせて月々144,747円の生活費がかかっています(※1)。

65歳以上単身世帯の消費支出 (※2)

消費支出 月平均額
食費 36,322円
住居 13,090円
光熱・水道 12,610円
家具・家事用品 5,077円
被服及び履物 2,940円
保健医療 8,429円
交通・通信 12,213円
教育 0円
教養娯楽 12,609円
その他 29,185円
非消費支出 12,271円
直接税 6,056円
社会保険料 6,158円
非消費支出 金額
直接税 6,056円
社会保険料 6,158円

(※1)出典:総務省統計局「家計調査年報(家計収支編)2021年(令和3年)家計の概要」
(※2)総務省統計局「家計調査年報(家計収支編)2021年(令和3年)家計の概要」を元に作成

二人世帯の場合

総務省統計局の調査結果によると、「65歳以上の夫婦のみの無職世帯」では消費支出の平均は224,436円、非消費支出の平均は30,664円となっています。

消費支出とは、普段の生活で必要な商品やサービスを購入して払ったお金などのことで、非消費支出とは、税金や社会保険料など世帯の自由にならない支出などのことです。65歳以上の夫婦のみの無職世帯では、両者をあわせて月々255,100円の生活費がかかっています(※1)。

65歳以上二人世帯の消費支出 (※2)

消費支出 月平均額
食費 65,789円
住居 16,498円
光熱・水道 19,496円
家具・家事用品 10,434円
被服及び履物 5,041円
保健医療 16,163円
交通・通信 25,232円
教育 0円
教養娯楽 19,239円
その他 46,542円
非消費支出 金額
直接税 12,109円
社会保険料 18,529円

(※1)出典:総務省統計局「家計調査年報(家計収支編)2021年(令和3年) 家計の概要」
(※2)総務省統計局「家計調査年報(家計収支編)2021年(令和3年)家計の概要」を元に作成

老後の資金は年金だけでは足りない?年金受給額の平均はいくら?

老後の年金受給額は単身世帯と二人世帯で変わります。以下ではそれぞれの世帯における年金受給額の平均値をご紹介します。

単身世帯の場合

単身世帯の場合、65歳以降に受け取る年金額は会社員の場合と自営業者の場合で異なります。年金額の平均は前述のとおりで、会社員で厚生年金に加入しているなら月145,665円、自営業者で国民年金に加入しているなら月66,250円です(※1)(※2)。

さきほどご紹介したように、65歳以上の単身無職世帯では月々144,747円の生活費がかかるので、会社員であれば年金収入でまかなえますが、自営業者だと差額にあたる78,497円だけ毎月の生活費が不足します(※3)。

ただし、厚生年金の年金額は働いているときの給料で変わり、国民年金の年金額は保険料の免除期間や未納期間の有無などで変わります。厚生年金を受け取る人でも年金収入だけでは老後の生活資金が不足する場合があるので注意が必要です。

(※1)出典:厚生労働省「令和5年度の年金額改定についてお知らせします」
(※2)出典:厚生労働省「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
(※3)出典:総務省統計局「家計調査年報(家計収支編)2021年(令和3年)家計の概要」

二人世帯の場合

厚生労働省の「厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、2021年度末における厚生年金(老齢給付)の平均年金月額は145,665円です(※1)。また2023年度の国民年金の年金額は月額66,250円となっています(※2)。夫が会社員で厚生年金を受け取り、妻が専業主婦で国民年金を受け取る場合、両者を合計した受取額は211,915円です。

前述のとおり、65歳以上の夫婦のみの無職世帯では月々255,100円の生活費がかかるので、差額43,185円だけ毎月の生活費が不足します(※3)。

実際に受け取る年金額や老後の生活費は世帯ごとに異なりますが、老後に生活資金が不足するのであれば、老後を迎える前に貯蓄をしたり老後も働いて収入を得て不足額をカバーしたりするなど、何らかの対策が必要になります。

(※1)出典:厚生労働省「令和5年度の年金額改定についてお知らせします」
(※2)出典:厚生労働省「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
(※3)出典:総務省統計局「家計調査年報(家計収支編)2021年(令和3年)家計の概要」

老後の資金として必要になる貯蓄額の計算方法

例えば、先ほどの「家計調査年報(家計収支編)2021年(令和3年)Ⅱ総世帯及び単身世帯の家計収支」65歳以上の夫婦のみの無職世帯のデータを参照してみます。65歳から20年間とすると、老後に必要な資金は以下の通りになります。

年金のみで考えますので社会保障給付から生活費を差し引きます。

・(社会保障給付-(消費支出+非消費支出))×20年間=老後に必要な資金

こちらをもとに計算してみます。

(216,519円-224,436円+30,664円)×12カ月×20年=9,259,440円

年金だけで生活すると約930万必要となる計算になります。なお、このケースは夫婦で毎月216,519円の年金が支給されているので比較的少ない貯蓄額になっていますが、支給額が少なければ少ないほどお金はたくさん必要となります(※1)。

また、前提として毎月の生活費が約25万円かかっていますが、家庭によってはもう少し生活費を抑えることも可能だと考えられます。

ちなみに、老後2,000万円問題の発端となったのが、金融庁が発表した金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」です。こちらの資料によれば、高齢夫婦の無職世帯は毎月約5万円の赤字になると想定されています。

そのため、毎月約5万円の赤字が20年続けば約1,300万円、30年で約2,000万円必要と考えられているのです(※2)。

このように、金融庁の報告では老後資金はおよそ2,000万円程度必要とされていますが、家庭によって生活費は大きく異なりますので一概に2,000万円必要と断定することも難しいでしょう。

(※1)出典:総務省統計局「家計調査年報(家計収支編)2021年(令和3年)家計の概要」
(※2)出典:金融庁「金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書 高齢社会における資産形成・管理」

60歳以上の人は実際いくら貯めている?

あらかじめ貯蓄をしておけば老後の資金として必要な額をまかなえますが、実際の貯蓄額はいくらくらいなのでしょうか?以下では、年金生活者もしくは間もなく年金を受給しはじめる世代である60歳以上の人の貯蓄額についてご紹介します。

単身世帯の場合

金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査](令和4年)」によると、60代の金融資産保有額の平均は1,388万円、預貯金の平均は691万円。60代の預貯金は、40代の平均値250万円、50代の平均値374万円に比べると増えています(※)。

しかし、例えば毎月の生活費が14万円、公的年金の受給額が月10万円なら、65歳から85歳までの20年間に必要な資金は「(14万円-10万円)×12ヶ月×20年=960万円」となり、平均的な預貯金額691万円では足りません。

平均的な預貯金額をもとにシミュレーションしてみると、老後の生活資金が不足すると考えられるので、老後に困らないようにするためには、早くから資産形成を行って資金を用意しておくことが重要といえます。

(※)出典:金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査](令和4年)」

二人世帯の場合

金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和4年)」によると、60代の金融資産保有額の平均は1,819万円、預貯金の平均は834万円です。生活費に充てるため取り崩すことも考えられる預貯金は、40代の平均値356万円、50代の平均値508万円に比べると60代では増えています(※)。

しかし、前述の事例では、老後の月々の生活費が25万円、年金収入が月15万円だと、65歳から85歳までの20年間に必要な生活資金は「(25万円-15万円)×12ヶ月× 20年=2,400万円」です。平均的な預貯金額834万円では足りません。

勤めている会社を定年退職する際、差額を埋めるだけの退職金をもらえる場合は良いでしょうが、そうでない場合は老後の資産が不足します。

(※)出典:金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和4年)」

老後の資金を準備するときの考え方

老後の資金としていくら必要になるのか、用意すべき金額は自分や家族の状況によって変わり、老後の理想の過ごし方や考え方によっても変わります。自分や家族が望む形で老後の生活を送るためにも、老後の資金について考える際にはポイントをおさえたうえで準備することが大切です。

老後への備え方は年齢やライフステージによって変わる

例えば20代は収入が少なく、貯蓄に回す余裕がない人もいるので、老後を意識して無理に貯蓄をすると、生活費として今使える金額が減って生活に支障が出る可能性があります。老後の生活を優先するあまり今の生活で困っては問題なので、老後への備えは無理のない範囲で行いましょう(※)。

また、結婚や出産などを経てライフステージが変化すれば、そのときどきの生活費が変わり、結果として老後への備えとして貯蓄に回せる金額も変わります。家族が増えて生活費が増えた場合や、ライフステージの変化にあわせた保険の見直しにより保険料が高くなった場合など、今の支出が増えて貯蓄に回せる金額が減る場合もあるので、ライフステージが変化するタイミングではライフプランについて見直しを行うようにしてください。

(※)出典:「国民年金基金連合会Lesson5 | 老後のお金のギモン全部お答えします」

持ち家と賃貸では必要資金の額が変わる

賃貸の場合は毎月家賃がかかるため、老後の資金としていくら必要なのか考える際には月々の生活費に家賃を含める必要があります。一方で持ち家の場合は、家賃はかからないものの住宅ローンの支払いや固定資産税や修繕費をはじめとした維持費がかかります。

持ち家と賃貸では必要資金の額が変わるので、老後の生活費を見積もる際には、自分が想定している老後の生活の仕方にあわせて考えるようにしてください。

退職金・満期保険金をはじめとした大きな収入や支出も考慮する

老後の生活資金としていくら準備する必要があるのか、計算する際に大きな収入や支出を考慮し忘れると必要額が正しく算出されないので、退職金や満期保険金、リフォーム費用や子・孫の世代への教育資金・住宅資金の贈与など、大きな収入や支出が予定されている場合は考慮に入れるようにしてください。

老後資金の準備の方法

老後の資金がいくら必要なのか、シミュレーションをして老後資金が不足することがわかった場合、老後を迎える前に準備する必要があります。以下では老後資金を準備する方法をいくつかご紹介します。

毎月一定額を貯蓄する

毎月の給料のうち一定額を銀行預金で貯めるようにすれば老後資金を準備できます。個人年金保険やiDeCoと違い、銀行預金であれば途中で引き出すことができるので、万が一大きな病気をして医療費が必要になった場合でも柔軟に対応できる点がメリットです。

例えば65歳を迎える時点で1,000万円を貯蓄しておきたい場合、39歳~64歳の25年間で貯めるなら年間の必要貯蓄額は40万円、月々の必要貯蓄額はおよそ3.3万円と計算できます。

個人年金保険やiDeCo(イデコ)を利用する

個人年金保険やiDeCoに加入して毎月保険料・掛金を払って積み立てれば老後資金を準備できます(※1)。税制上、優遇措置の適用を受けられるため、銀行預金で同じ額を積み立てる場合に比べると負担を軽減できる点がメリットです。毎月自動的に保険料・掛金が引き落とされれば、貯蓄が苦手な人でも老後に備えて着実に資産を積み立てることができます(※2)。

(※1)出典:厚生労働省「iDeCoの概要」
(※2)出典:厚生労働省「私的年金制度の概要(企業年金、個人年金)」

資産運用によって資金を増やす

株式や投資信託といった商品への投資により老後資金を準備することも可能です、低金利下に預貯金だけでは元本を大幅に増やすことは難しいですが、資産運用することで老後の生活資金を準備できる可能性があります。

ただし、資産運用では損失が出て資産が減るリスクもあります。老後資金が大きく減るようなリスクは取るべきではないので、ハイリスク・ハイリターンな運用を避けることをお勧めします。

老後資金の相談はauフィナンシャルパートナーへ

老後の資金としていくら必要なのか、計算するときにはさまざまな要素を考慮に入れる必要があります。auフィナンシャルパートナーであれば、老後資金の相談や資産形成に関するシミュレーションなど、家計の見直しに関する相談が可能です。

お金のプロであるFP(ファイナンシャルプランナー)が一人ひとりに合わせたキャッシュフロー表を作成し、お金に関するお悩み解決をサポートしてくれます。

まとめ

老後の資金としていくら必要になるのか、老後への備えは自分や家族の置かれた状況によって変わります。どのような老後の生活を送りたいのか、具体的にイメージしたうえで老後の生活費を見積り、年金収入だけではいくら足りなくなるのか試算してみましょう。

老後のライフプランを考える場合や生活費のシミュレーションを行いたい方は、お金のプロであるFPに相談することも検討してみてください。auフィナンシャルパートナーでは老後資金の相談や資産形成に関するシミュレーションを無料で行っています。お気軽にご相談ください。

執筆者名:
大木 ゆうすけ
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