資産形成・老後資金 2023.10.16

個人年金保険の基本情報を解説!元本割れのリスクなど、知っておきたい注意点も

2019年に老後の生活資金は2,000万円不足するとされる金融庁の試算が公表されて以来、老後資金の準備に対する関心が高まっています。個人年金保険はその方法のひとつで、公的年金や貯蓄に加えて、ゆとりある老後生活のための資金を準備する役割が期待されます。

しかし、個人年金保険がどのような商品でどれくらいの資金を準備できるのか、加入のメリットは本当にあるのかなど、疑問を感じる方もいるでしょう。

本記事では、個人年金保険の概要や老後資金が貯まる仕組み、選び方をわかりやすく解説します。個人年金と同じく任意で加入できる年金制度、iDeCo(イデコ)との違いも紹介するので、ぜひご一読ください。

個人年金保険の基本情報

日本の年金制度は3階建てで表現されます。

1階部分は20歳以上60歳未満の国民すべてに加入が義務づけられている「国民年金(基礎年金)」、2階部分は70歳未満までの会社員や公務員が加入する「厚生年金保険」です。

会社員と公務員は、国民年金と厚生年金保険のふたつに加入することになります。

公的年金は、現役世代が支払う保険料が高齢世代の給付に使われる仕組みです。そのため、少子高齢化が続く今、公的年金だけに頼らず別の方法で老後資金を貯める方法が注目されています。

それが3階部分にあたる私的年金です。私的年金は、公的年金への上乗せにより老後の生活費を補完する目的で、任意で加入するものです。

私的年金は多様な制度や商品から選ぶことができ、企業を通じて加入する私的年金には「企業型確定拠出年金」「確定給付企業年金」「厚生年金基金」があります。

一方、「個人年金保険」や「iDeCo(イデコ)」は、個人で加入できる私的年金です。これらの私的年金は制度や商品によって特徴が異なります。

個人年金保険の仕組み

個人年金保険は、年金の受取期間や運用方法、運用する通貨、保険料の払込方法などにより数種類に分類されます。以下では、それぞれの特徴を詳しく解説します。

種類と受取期間

個人年金保険は、60歳や65歳など一定の年齢に達するまで毎月保険料を支払い、払い込みが終了すると年金または一時金で保険金を受け取る仕組みです。年金の受取方によって、次の3種類に分かれます。

種類 年金の受取期間 受取中に死亡したとき
確定年金 決められた一定期間
(10年、15年など)
遺族が受け取れる
有期年金 決められた一定期間
(10年、15年など)
受け取り終了(※)
終身年金 一生涯 受け取り終了(※)

(※)保証期間を設定する商品もあります。

確定年金は、5年から15年など、契約時に決められた一定期間にわたって年金を受け取る種類です。受取期間中に被保険者が亡くなった場合には、遺族が残額を受け取れます。

有期年金も確定年金と同じく、決められた一定期間にわたって年金の受け取りが可能です。ただし、受取期間中に被保険者が亡くなると年金の支払いは終了します。その分、確定年金より保険料が割安の傾向です。

終身年金は一生涯年金を受け取れますが、被保険者が亡くなると年金は終了します。

なお、有期年金と終身年金のなかには、被保険者が亡くなったあとも保証期間中であれば、遺族が残りの年金を受け取れる保証期間付きの商品もあります。

また、一部商品では払込期間終了後、年金を受け取るまで一定の据え置き期間が設けてあります。

例えば据え置き期間が5年の場合、60歳で保険料を払い込んで65歳から年金を受け取れるということです。その場合、据え置き期間も運用が続くため、払込後すぐに受け取るよりも年金額を増やせる可能性があります。

運用方法

個人年金保険は、運用方法による違いで「定額年金保険」と「変額年金保険」の2つに分類されます。

「定額年金保険」は将来の受取金額があらかじめ決まった商品で、契約するときに保険会社が提示する予定利率で運用されます。年金の受取額が保証されているため、老後の資金計画を立てやすいでしょう。

しかし、契約のタイミングによっては低い利率で運用される恐れもあります。

「変額年金保険」は、契約者が自分で選んだ投資信託や債券などで運用されます。運用実績によって将来受け取る年金額が変動するところが特徴で、運用次第では受取年金額が払込保険料総額を上回ることもあります。

加えて、インフレリスクに対応できるメリットがありますが、運用成績次第では受取総額が払込保険料総額を下回る可能性があることに注意が必要です。

運用する通貨

個人年金保険は、契約者が払い込んだ保険料(年金原資)を運用する通貨を「円貨」と「外貨」から選べます。

円建て運用は、支払う保険料から受け取る年金まですべて日本円です。払込保険料総額と受取総額が契約時に確定します。

外貨建て運用のような為替変動リスクはないものの、日本国債の金利が低いため、運用成果が低くなる傾向です。

外貨建て運用は、支払った保険料が米ドルや豪ドルなどの外貨で運用されます。運用される外貨は日本円よりも金利が高く、円建てよりも保険料が割安で運用成果が高くなる傾向があります。

ただし、為替変動リスクがあり、年金を受け取るときに円換算すると年金が想定より低くなる場合もあります。加えて、為替手数料をはじめとする諸費用が発生します。

保険料の払込方法

個人年金保険の保険料の払込方法(回数)は、主に「月払」「半年払」「年払」「一時払」から選択できるほか、「前納」や「一括払」などの方法もあります。

払込方法 内容
月払 保険料を毎月払い込む方法
半年払 保険料を半年に1回払い込む方法
年払 保険料を1年に1回、一括で払い込む方法
一時払 すべての期間の保険料を契約時に1回で払い込む方法
前納 「半年払」の保険料を数回分、または「年払」の保険料を数年分まとめて払い込む方法
一括払 「月払」の保険料を数ヶ月分、まとめて払い込む方法

「前納」「一括払」は、払い込んだお金を生命保険会社に預けた状態となり、その中から払込期日が来るたびに保険料として充てる仕組みです。

一般的には、月払より半年払、半年払より年払と、まとめて払い込むほど保険料が割安となります。

なお、保険会社によって選択できる払込方法は異なり、契約の時期などによっては「半年払」「年払」といった呼称も異なる場合があります。

個人年金保険のメリットと注意点

個人年金保険にはさまざまな種類があり、自分の希望や家計状況にあわせてお好きな商品を選択できます。これまでの概要を踏まえたうえで、より良い選択のために知っておきたい、個人年金保険のメリットと注意点を確認しましょう。

個人年金保険は生命保険料控除が受けられる

個人年金保険は生命保険のひとつに分類されるため、一定の条件を満たすと生命保険料控除の対象となり、所得税や住民税を軽減できます。

生命保険料や介護医療保険料とは別枠の個人年金保険料に含まれるため、生命保険や医療保険の加入で上限まで控除されていても、別枠で控除を受けることが可能です。

ただし、生命保険料控除は保険料を払い込んだ年度が対象となるため、個人年金保険の保険料を一時払した場合は支払った年度のみが控除対象となります。

また、保険と名がつく商品であっても、ほかの保険に比べると健康状態に不安があっても加入しやすいところや、保険料が口座引落しされるため、コツコツと長く続けやすい点もメリットだといえるでしょう。

個人年金保険は元本割れする可能性がある

個人年金保険には元本割れのリスクがあります。

払込期間中に途中解約すると解約返戻金を受け取れますが、これまでの支払保険料を下回る可能性は高くなります。途中解約をするなら、払済保険や年金額の減額などを検討した方が良いかもしれません。

あらかじめ年金額が確定している定額年金であっても、インフレが続けば受け取る年金額の価値は実質目減りしてしまいます。しかし、インフレリスクに強い外貨建て運用を選ぶと、為替変動リスクを考慮する必要があります。

また、一括で受け取ると元本割れするケースもあります。まれに元本を保証する商品もありますが、円建て運用である、途中解約せず保険料を払い込む、一括ではなく年金で受け取るなど、いくつもの条件が設定されていることがほとんどです。元本割れを避けたい場合は、受取方法を年金方式にしましょう。

さらに、同じ私的年金のiDeCoと比較すると、iDeCoの掛金は全額所得控除、運用益は非課税、受取時は一時金でも年金でも控除対象となるのに対し、個人年金保険で受けられるのは生命保険料控除のみです。

個人年金保険の選び方

最後に、自分に適した個人年金保険の選び方を解説します。

老後に必要な生活資金から決める

人それぞれ老後に必要な生活資金、今から準備したい目標金額は異なります。まずは老後に必要な資金を考えてみましょう。ここでは、老後生活が60歳から始まるものと仮定します。

生命保険文化センターの令和4年度の調査によると、夫婦2人で老後生活を送るのに必要な最低生活費は月23.2万円です。ゆとりある老後生活には月37.9万円が必要との結果でした(※1)。

令和3年の60歳時点の平均余命は、男性が男性24.02年、女性29.28年です(※2)。このことから考えると、老後生活には月23.2万円の生活資金を25~30年分、つまり最低でも6,960万~8,352万円ほどの用意が必要だということです。

自分がのぞむ生活レベルによって不足と考える金額は変わるため、自分は老後にどのような生活を送りたいのかきちんと考えて、不足しそうな額を把握しておきましょう。

(※1)出典:生命保険文化センター「2022(令和4)年度 生活保障に関する調査」
(※2)出典:厚生労働省「令和3年簡易生命表」

受取期間や受取方法、返戻率で決める

個人年金保険に加入する目的やライフプランに応じて、希望する受取期間や返戻率などから商品を選ぶ方法もあります。

「60歳で一括して受け取る」「65歳から15年間年金形式で受け取る」など、個人年金保険の受取方はさまざまです。

契約者と受取人が同じ場合、一時金で受け取ると一時所得、年金で受け取ると雑所得として、それぞれ所得税の課税対象になるため、税額を比べてよりお得な受取方を選ぶのも良いでしょう。

また、同じ保険料を支払っても、種類によって返戻率に差が出ることがあります。

元本割れのリスクをとっても、個人年金保険の加入でより多くの老後資金の確保へつなげたいなら、さまざまな商品を比較したうえで高い返戻率を望めるものを選びましょう。

必要に応じてiDeCoなど別の私的保険を検討する

私的年金には、個人年金保険だけでなくほかの選択肢もあります。なかでもiDeCoは先に触れたとおり、掛金・運用益・受取時と3つの税制優遇を受けられます。

また、iDeCoは個人年金保険とは違って自分で投資先を選べ、景気動向にあわせて投資先の変更も可能であり、インフレにも強いのも魅力です。元本割れのリスクはあるものの、運用結果によっては大きなリターンを見込めます。

ただし、老後資金の準備を目的としているため、60歳まで原則解約できない点にはご注意ください。

老後資金の準備をしたいならauフィナンシャルパートナーにご相談を

定年後は誰もがゆとりある生活を理想としているでしょう。しかし、いざ必要になってから老後資金を短期間で準備するのは難しいのが実情です。そのため、早いうちから計画的に老後資金を確保することが大切だといえます。

老後資金を計画的に準備するには、家計から無駄と思われる出費を見直し、老後資金の準備に向けた財源を確保することが重要です。

家計を見直す手段として、例えば固定費である居住費や通信費の削減、加入している保険の見直しなど、さまざまなことが挙げられますが、そもそも何から取り掛かったら良いのかわからない方も多いと思います。

そんな方は、auフィナンシャルパートナーのauマネープラン相談を活用してはいかがでしょうか。

auフィナンシャルパートナーでは、個人年金保険に関する悩みをはじめ、老後資金の準備方法や教育資金にかかわる疑問点など、お金に関する幅広いお悩みをご相談いただけます。何度でも無料で相談でき、日本全国へ訪問対応も可能です(※)。

早めに老後に備えたい方はもちろん、何から始めたら良いかわからない方や個人年金保険への加入に迷っている方も、ぜひauフィナンシャルパートナーへご相談ください。

(※)離島および一部のエリアを除きます

まとめ

個人年金保険は、公的年金に上乗せして、将来の老後資金に備える私的年金のひとつです。一定期間保険料を支払うと、あらかじめ決められた期間あるいは一生涯、年金を受け取れます。

ただし、商品や運用状況、途中解約などにより、元本割れのリスクもある点はきちんと理解しておきましょう。

老後の生活資金の準備をするなら、まずは目標金額・目的を明確にすることから始めてはいかがでしょうか。老後のお金に関する悩みや疑問をプロに相談したいなら、ぜひauフィナンシャルパートナーの活用をご検討ください。

執筆者名:
トダ アキコ
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