資産形成・老後資金 2023.10.13

退職金の相場はいくら?企業規模や勤続年数、業種別など金額の目安を解説

老後を考えたとき、退職金の相場や仕組みが気になる方は多いと想定されます。

退職金制度の内容や退職金の算出方式は、企業により異なります。また、退職金額は企業規模や勤続年数、業種などによってもさまざまです。

本記事では、退職金の相場を企業規模や勤続年数、業種別などにわけて解説します。退職金の受け取り方や計算方法、税金に関しても説明するので、参考にしてください。

退職金の相場はさまざまな要素により異なる

退職金とは、退職する際に会社から支払われるお金のことです。まずは退職金の相場について、企業規模別・勤続年数別・退職理由別・業種別にわけて解説します。

【企業規模別(大企業・中小企業)】退職金の相場

厚生労働省(中央労働委員会)の「令和3年賃金事情等総合調査」によると、男性が大企業に定年まで勤めた場合の平均退職金額は以下のとおりでした(※1)。

大学卒 高校卒
平均退職金額 22,304,000円 20,176,000円

(※)同調査は、資本金5億円以上かつ労働者1,000人以上の企業が対象となっています。

一方、中小企業の退職金額に関しては、東京都産業労働局による都内の中小企業を対象とした「中小企業の賃金・退職金事情(令和4年版)」で定年時のモデル退職金額が公表されています(※2)。

大学卒 高校卒
モデル退職金額 10,918,000円 9,940,000円

(※)学校卒業後すぐ入社した方が普通の能力と成績で勤務した場合の水準です。

大企業・中小企業の退職金額を比べてみると、大企業は中小企業の約2倍であり、企業規模で大きな差があることがわかります。

(※1)出典:厚生労働省(中央労働委員会)「令和3年賃金事情等総合調査」
(※2)出典:東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情(令和4年版)」
上記資料をもとに筆者が表を作成

【勤続年数別】退職金の相場

厚生労働省(中央労働委員会)「令和3年賃金事情等総合調査」によると、大企業の勤続年数別モデル退職金額は以下のとおりでした(※1)。

勤続年数 大学卒(総合職) 高校卒(総合職)
会社都合 自己都合 会社都合 自己都合
3年 690,000円 323,000円 522,000円 314,000円
5年 1,180,000円 594,000円 894,000円 522,000円
10年 3,102,000円 1,799,000円 2,142,000円 1,378,000円
15年 5,779,000円 3,873,000円 4,035,000円 2,890.000円
20年 9,531,000円 7,265,000円 6,647,000円 5,573,000円
25年 13,938,000円 11,431,000円 10,050,000円 8,638,000円
30年 19,154,000円 17,067,000円 13,679,000円 11,970,000円
35年 23,649,000円 21,634,000円 16,694,000円 15,462,000円
38年 25,280.000円 22,692,000円 19,252,000円 16,789,000円
定年 25,639,000円 19,712,000円

次に、東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情(令和4年版)」をもとに、中小企業の勤続年数別モデル退職金額をみてみましょう(※2)。

勤続年数 大学卒 高校卒
会社都合 自己都合 会社都合 自己都合
3年 338,000円 238,000円 274,000円 189,000円
5年 641,000円 470,000円 489,000円 358,000円
10年 1,498,000円 1,121,000円 1,223,000円 907,000円
15年 2,658,000円 2,129,000円 2,148,000円 1,705.000円
20年 4,147,000円 3,431,000円 3,284,000円 2,729,000円
25年 5,782,000円 4,906,000円 4,656,000円 3,971,000円
30年 7,542,000円 6,536,000円 6,046,000円 5,325,000円
33年(高校卒は35年) 8,762,000円 7,760,000円 7,575,000円 6,725,000円
38年 8,486,000円 7,415,000円
定年 10,918,000円 9,940,000円

一般的に、勤続年数が増えるほど退職金額は高くなります。また、大学卒の方が大企業・中小企業で定年まで勤めた場合の退職金額を比べると、大企業は中小企業の1.5倍ほどの金額になっています。

(※1)出典:厚生労働省(中央労働委員会)「令和3年賃金事情等総合調査」
(※2)出典:東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情(令和4年版)」
上記資料をもとに筆者が表を作成

【退職理由別】退職金の相場

次に、厚生労働省(中央労働委員会)「令和3年賃金事情等総合調査」をもとに、退職理由別の平均退職金額を以下にまとめました(※)。

定年退職 会社都合 自己都合
平均退職金額 18,729,000円 11,729,000円 4,473,000円

上表からわかるとおり、自己都合で退職すると平均退職金額は大きく下がります。

なお、自己都合退職とは、家庭の事情などの個人的な都合で自分から退職を申し出ることです。対して、会社都合退職は、会社の倒産や業績不振によるリストラなどを理由に退職することをさします。

(※)出典:厚生労働省(中央労働委員会)「令和3年賃金事情等総合調査」をもとに筆者が表を作成

【業種別】退職金の相場

退職金額は、業種によっても変わってきます。ここでは、東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情(令和4年版)(※)」をもとに、定年まで勤めた場合の業種別モデル退職金額を紹介します。

業種 大学卒 高校卒
建設業 12,203,000円 11,334,000円
製造業 10,685,000円 9,996,000円
情報通信業 11,929,000円 9,418,000円
運輸業、郵便業 13,323,000円 11,428,000円
卸売業、小売業 11,329,000円 10,361,000円
金融業、保険業 14,422,000円 10,736,000円
不動産業、物品賃貸業 10,128,000円 5,136,000円
学術研究、専門・技術サービス業 9,648,000円 10,261,000円
生活関連サービス業 8,469,000円 7,169,000円
教育、学習支援業 12,449,000円
医療、福祉 3,424,000円 3,323,000円
サービス業(その他) 9,044,000円 9,958,000円

金融業や運輸業、郵便業は、ほかの業種と比べて退職金が高い傾向です。また、大学卒・高校卒で退職金額が大きく変わらない業種もありますが、不動産業は大きな差があることがわかります。

(※)出典:東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情(令和4年版)」をもとに筆者が表を作成

退職金の支給方法は2種類ある

退職金制度は、大きく「退職一時金制度」と「退職年金制度」に分けられます。

・退職一時金制度:一時金で支給される退職金制度
・退職年金制度:年金を継続的に支給される退職金制度

導入している年金制度は企業によって異なり、なかには併用している企業もあります。厚生労働省「平成30年就労条件総合調査」によると、企業規模が大きくなるほど両制度を併用している企業が多い傾向がみられました(※)。

企業規模 退職一時金制度のみ 退職年金制度のみ 両制度併用
全体平均 73.3% 8.6% 18.1%
1,000人以上 27.6% 24.8% 47.6%
300~999人 44.4% 18.1% 37.5%
100~299人 63.4% 12.5% 24.1%
30~99人 82.1% 5.4% 12.5%

(※)出典:厚生労働省「平成30年就労条件総合調査」をもとに筆者が表を作成

退職一時金の計算方法

退職金の算出方法はいくつか種類があり、企業により異なります。

退職金の算出方法 概要
定額制 勤続年数に応じて定額の退職金が支払われる
基本給連動制 退職時の賃金に、勤続年数などに応じた支給率を乗じて算出する
別テーブル制 役職などで決まる基礎額に、勤続年数などに応じた支給率を乗じて算出する
ポイント制 勤続年数などをポイント化し、累積ポイントにポイント単価を乗じて算出する

定額制は、退職金額を把握しやすい算出方法です。ただし、勤続年数のみで決まるため、賃金や役職は加味されません。

基本給連動制・別テーブル制は算出方法が似ていますが、基本給連動制は退職時の賃金を基礎として算出するのに対し、別テーブル制では仕事の評価などが退職金額に反映されます。また、ポイント制は、会社への貢献度が反映されやすい算出方法です。

厚生労働省(中央労働委員会)「令和3年賃金事情等総合調査」によると、ポイント制を導入している企業が最も多い結果となっています(※)。

算出方法 割合
基本給連動制 14.8%
別テーブル制 12.8%
ポイント制 68.4%
その他 7.4%

(※)出典:厚生労働省(中央労働委員会)「令和3年賃金事情等総合調査」をもとに筆者が表を作成

退職金にかかる税金

退職一時金を受け取ると、退職所得として所得税・住民税が課税されます。

ただし、退職金は長年の功労に報いることを目的としているため、税金の負担が大きくならないように退職所得控除の制度が設けられています。退職所得控除とは、税金を計算する際に退職金額から差し引けるものです。

退職所得控除額は、勤続年数に応じて決まります。

勤続年数 退職所得控除額
20年以下 40万円×勤続年数(80万円未満の場合は80万円)
20年超 800万円+70万円×(勤続年数-20年)

例えば、勤続年数が35年の場合、退職所得控除額は800万円+70万円×15年=1,850万円となります。退職金額が1,850万円を超えていない場合は、所得税・住民税は課税されません。

また、退職所得金額は、退職金の収入から退職所得控除を差し引いた金額をさらに半分にして算出します。

・(退職金額-退職所得控除額)×1/2=退職所得の金額

したがって、退職金にかかる税金は一般的にそこまで高くなりません。また、ほかの所得とは分離して課税されるため、会社を通じて「退職所得の受給に関する申告書」を提出すれば確定申告は不要です。退職所得に応じて源泉徴収され、納税が完結します。

ただし、「退職所得の受給に関する申告書」を提出していない場合は20.42%が源泉徴収されるため、確定申告の手続きが必要です。

退職金に関して知っておきたい注意点

前半の章で平均・モデル退職金額を紹介しましたが、なかには退職金制度を導入していない企業もあります。

厚生労働省「平成30年就労条件総合調査」によると、退職一時金制度・退職年金制度を導入している企業は80.5%です(※1)。つまり、19.5%の企業には退職金制度が導入されておらず、退職時に退職金が受け取れません。

企業規模別に導入割合をみてみると、規模の大きい企業では退職金制度が導入されている割合が高い傾向にあります。

企業規模 退職金制度の導入割合
1,000人以上 92.3%
300~999人 91.8%
100~299人 84.9%
30~99人 77.6%

お勤め先に退職金制度が導入されているかどうかがわからない方は、総務部への問い合わせや就業規則・退職金規定で導入有無や内容を確認しましょう。

また、退職一時金を受け取るための最低勤続期間を設けている企業もあります。

厚生労働省(中央労働委員会)「令和3年賃金事情等総合調査(※2)」によると、会社都合では半数以上の企業が最低勤続年数を1年未満としており、自己都合では約半数の企業が3年以上としています。

(※1)出典:厚生労働省「平成30年就労条件総合調査」
(※2)出典:厚生労働省(中央労働委員会)「令和3年賃金事情等総合調査」
上記資料をもとに筆者が表を作成

退職金だけでなく「+α」の取り組みが大切

退職金を老後の生活費に充てたいと考える方は多いと思いますが、老後資金のすべてをまかなえるわけではありません。

今や、ひとつの企業で働き続ける終身雇用があたり前ではなくなりました。退職金額は、一般的に勤続年数が長いほど多くなるため、転職すると金額は少なくなります。

また、退職金制度を導入していない企業ではそもそも退職金が受け取れません。さらに、退職金制度の内容が変わることも考えられます。

そのため、退職金だけに頼るのではなく、自ら老後に備えて準備をしておく必要があるでしょう。老後に備えるには、個人型確定拠出年金(iDeCo)やNISAなどの老後資金を私的に準備できる制度を利用するのも選択肢のひとつです。

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まとめ

2021年度の大企業(大学卒)の平均退職金額は22,304,000円、中小企業(大学卒)のモデル退職金額は10,918,000円でした。ただし、実際の退職金額は、企業規模・退職理由・勤続年数・業種などで異なります。

勤務先で導入されている退職金制度の内容を理解し、もらえる退職金の目安を知っておきましょう。退職金の使い道に迷っている方や老後資金に不安を感じている方は、auフィナンシャルパートナーにご相談ください。

執筆者名:
松崎 みづき
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