資産形成・老後資金 2023.3.31

iDeCoの所得控除とは?年末調整・確定申告の流れも解説

近年、テレビやインターネット上で「iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)」という言葉を耳にすることが増え、気になっている方は多いと思います。

iDeCoとは、掛金を拠出して投資信託などで運用を行う、私的年金制度のひとつです。拠出した掛金が全額所得控除の対象となるため、所得税・住民税の負担が軽減される側面があります。

本記事では、iDeCoの所得控除の概要や控除額、手続き方法を解説します。控除額のシミュレーションも紹介するので、ぜひ参考にしてください。

iDeCoの所得控除とは

iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)とは、公的年金の上乗せとして私的に加入できる年金制度です。月々5,000円から1,000円ごとで設定して掛金を拠出し、自分で選んだ方法で運用を行い、原則60歳から給付金(掛金と運用益の合計)を受け取れます。

また、iDeCoで拠出した掛金は全額所得控除(小規模企業共済等掛金控除)の対象となります。

所得控除とは、所得税の額を算出する際、個人的事情を加味するために所得金額から差し引ける制度です。控除される分だけ課税所得が少なくなるため、所得税・住民税の軽減につながります。

所得控除を受けるには、年末調整または確定申告の手続きが必要です。年末調整とは、本来納めるべき所得税額と源泉徴収された税額を再計算して過不足を調整する手続きをさします。

iDeCoの所得控除額

iDeCoで掛金を払い込むと、小規模企業共済等掛金控除の対象になります。ここでは、控除額の計算方法、税負担シミュレーションを紹介します。

iDeCo控除額の計算方法

iDeCoで拠出した掛金は、全額が所得控除の対象となります。例えば、毎月23,000円掛金を拠出した場合の所得控除額は、276,000円(23,000円×12ヶ月)です。

毎月の掛金が多いほど控除額も大きくなりますが、職業に応じて拠出限度額が定められています。また、会社員の場合は、会社で加入している年金によって限度額が変わってくるため注意してください。

加入資格 拠出限度額
第1号被保険者・任意加入被保険者 自営業者など 月額6.8万円(※1)
第2号被保険者 会社員・公務員など 会社に企業年金がない会社員 月額2.3万円
企業型DC(※2)のみに加入している会社員 月額2.0万円(※4)
DB(※3)と企業型DCに加入している会社員 月額1.2万円(※5)
DBのみに加入している会社員 月額1.2万円
公務員 月額1.2万円
第3号被保険者 専業主婦(夫) 月額2.3万円

(※1)国民年金基金または国民年金付加保険料との合算で月額6.8万円
(※2)企業型DC:企業型確定拠出年金
(※3)DB:確定給付企業年金(DB)、厚生年金基金、石炭鉱業年金基金、私立学校教職員共済
(※4)企業型DCのみに加入する場合、月額5.5万円-各月の企業型DCの事業主掛金額(上限2.0万円)
(※5)企業型DCとほかの制度(DB)に加入する場合、月額2.75万円-各月の企業型DCの事業主掛金額(上限1.2万円)

iDeCoによる税負担シミュレーション

ここでは、年収500万円、掛金12,000円(年額144,000円)の場合を例に、税負担シミュレーションを紹介します。以下の控除が受けられると仮定して試算しました。

・給与所得控除:144万円
・基礎控除:48万円(住民税43万円)
・社会保険料控除:75万円(年収の15%で試算)

掛金の控除額は、12,000円×12ヶ月=144,000円です。iDeCoに加入した場合・未加入の場合の課税所得金額は、それぞれ以下のとおりです。

iDeCo未加入の場合 iDeCo加入の場合
課税所得金額(所得税) 2,330,000円 2,186,000円
課税所得金額(住民税) 2,380,000円 2,236,000円

課税所得金額から所得税額・住民税額を計算すると、以下のようになります。

iDeCo未加入の場合 iDeCo加入の場合 差額
所得税額(※) 135,500円 121,100円 14,400円
住民税額 238,000円 223,600円 14,400円
合計 373,500円 344,700円 28,800円

(※)復興特別所得税は考慮していません

なお、住民税率は課税所得に関係なく一律10%ですが、所得税率は課税所得が多いほど高くなる仕組みです。そのため、控除される金額は課税所得によって変わります。

年末調整で所得控除を受ける方法

会社員や公務員は、年末調整をすれば所得控除の対象となります。

手続きが必要となるのは、掛金を個人払込(口座振替)で拠出している場合です。事業主払込(給与天引)で拠出している方は、個人で手続きをする必要はありません。

年末調整でiDeCoの所得控除を受ける手順は、以下のとおりです。

1.「小規模企業共済等掛金払込証明書」を保管する
2.給与所得者の保険料控除申告書」を記入する
3.お勤め先に提出する

以下で詳細を解説します。

「小規模企業共済等掛金払込証明書」を保管する

1~12月にiDeCoで掛金の拠出があった場合、10月頃に国民年金基金連合会から「小規模企業共済等掛金払込証明書」が届きます。

小規模企業共済等掛金払込証明書とは、その年に払い込んだ金額または12月までの払込予定金額が記載された書類です。年末調整で必要となるため、手続きまで大切に保管しましょう。

なお、小規模企業共済等掛金払込証明書の発送時期は、iDeCoの加入日などにより異なります。また、掛金の拠出がない場合は発送されません。

「給与所得者の保険料控除申告書」を記入する

年末調整の時期に、お勤め先から渡される「給与所得者の保険料控除申告書」に掛金の合計額を記入しましょう。

記入するのは、「小規模企業共済等掛金控除」の「確定拠出年金法に規定する個人型年金加入者掛金」の欄です。掛金の合計額は、小規模企業共済等掛金払込証明書に記載されています。また、申告書の上部には氏名と住所または居所を記入しましょう。

お勤め先に提出する

「小規模企業共済等掛金払込証明書」を「給与所得者の保険料控除申告書」に添付してお勤め先に提出すれば、年末調整の手続きは完了です。

なお、小規模企業共済等掛金払込証明書を紛失した場合は、「小規模企業共済等掛金払込証明書再発行申請書」を提出すれば再発行が可能です。再発行には日数がかかるため、余裕をもって手続きしましょう。

確定申告で所得控除を受ける方法

年末調整で手続きができない場合は、確定申告が必要です。具体的には、個人事業主や年末調整で申告し忘れた会社員、専業主婦などが該当します。確定申告での手順は以下のとおりです。

1.「小規模企業共済等掛金払込証明書」が届く
2.確定申告書を記入する
3.確定申告書を提出する

以下で詳細を解説します。

「小規模企業共済等掛金払込証明書」が届く

確定申告の際にも、国民年金基金連合会から届く「小規模企業共済等掛金払込証明書」が必要となります。なくさないよう大切に保管しておきましょう。

確定申告書を記入する

1年間に払い込んだ掛金の合計額を「確定申告書」に記入します。記入するのは、「所得から差し引かれる金額」の「小規模企業共済等掛金控除」欄です。

また、「確定申告書等作成コーナー」を利用すれば、画面の案内にしたがって金額などを入力するだけで簡単に書類を作成できます。

確定申告書を提出する

「収入金額等」や「所得金額等」などのそのほか必要事項も含め記入が終わったら、税務署に確定申告書を提出しましょう。

郵便や税務署の窓口に持参する方法もありますが、確定申告書等作成コーナーで書類を作成すれば、作成後パソコンやスマートフォンを利用してそのままe-Tax申告(電子申告)できます。

なお、e-Taxを利用する場合はマイナンバーカード読取対応のスマートフォンまたはICカードリーダライタが必要です。マイナンバーカードを持っていない方は、税務署の職員と対面により発行されたID・パスワードでe-Tax申告ができます。

iDeCoのほかの税制優遇

iDeCoは、掛金が全額所得控除の対象になるほかに2つの税制優遇があります。

・運用益が非課税になる
・受取時に控除の対象となる

金融商品を運用した場合、通常なら運用益は20.315%の源泉分離課税となりますが、iDeCoの運用益は非課税となります。

なお、運用益は非課税ですが、受取時に税金がかかる場合があります。ただし、iDeCoの給付を受け取る際は、公的年金等控除または退職所得控除の対象となります。

・年金で受け取る場合:公的年金等控除
・一時金で受け取る場合:退職所得控除

iDeCoを含めたお金に関する相談ならauフィナンシャルパートナーへ

iDeCoに興味があるものの詳しい情報を知らない場合、加入する期間や受取時期、控除のことなど、さまざまな疑問が浮かんでくることかと思います。iDeCoに関するご相談があるなら、auフィナンシャルパートナーを活用してはいかがでしょうか。

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※ご相談は実際にお会いする形で実施します。お電話、オンライン面談の形式では行っておりません。

まとめ

iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)は、公的年金の上乗せとして私的に加入できる年金制度です。月々5,000円から1,000円ごとで設定して掛金を拠出でき、掛金と運用益の合計を原則60歳から受け取れます。

iDeCoは、将来への備えとして活用できるのに加え、掛金の全額が所得控除の対象になる側面もあります。

iDeCoや老後資金に関して相談したい方は、auフィナンシャルパートナーのauマネープラン相談をご活用ください。

 

執筆者名:
松崎 みづき
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