資産形成・老後資金 2023.3.31

iDeCoの掛金上限額は?職種による違いや制度改正のポイントを解説

2022年5月に成立した法改正により、iDeCo(個人型確定拠出年金)がますます使いやすく充実した制度になったと注目している方は多いでしょう。

2024年12月には掛金上限額の変更も実施が予定されていますが、そもそもiDeCoの掛金上限額は会社員や公務員、自営業などの加入区分ごとに異なります。

本記事では、加入区分ごとに異なるiDeCoの掛金上限額をわかりやすく紹介します。法改正された内容のうち押さえるべきポイントも解説するので、ご一読ください。

iDeCoの掛金上限額

iDeCoとは、個人が任意で加入できる私的年金制度のひとつで、個人型確定拠出年金とも呼ばれます。自分で設定した掛金を積み立て、その掛金で自分が選んだ運用商品を運用し、掛金と運用益を合わせたものを年金として受け取れます。

掛金には上限額が設けられており、職業や企業年金の加入状況などによって異なります。掛金額は将来の年金受取額に影響するため、気になる方も多いでしょう。下記表では、加入区分別の掛金上限額を簡単にまとめました。

加入区分 掛金上限額(月額) 掛金上限額(年間)
自営業・フリーランス・学生(※1) 6.8万円 81.6万円
会社員(※2)
(会社に企業年金制度がない)
2.3万円 27.6万円
会社員(※2)(※3)
(会社で確定給付年金に加入している)
1.2万円 14.4万円
公務員(※3) 1.2万円 14.4万円
専業主婦(主夫)など 2.3万円 27.6万円

(※1)国民年金基金(および国民年金付加保険料)と合算した上限金額
(※2)マッチング拠出の場合の掛金上限金額は、会社の加入状況によって異なります。
(※3)2022年の法改正により、2024年12月からは会社の企業年金に加入する会社員・公務員は、iDeCoの掛金上限額が月額2万円まで引き上げられます。

条件や法改正によって掛金上限金額が異なる場合や変更になる場合もありますので、以下では、iDeCoの掛金上限額を加入区分ごとに詳しく紹介します。

自営業・フリーランス・学生

自営業者やフリーランス、学生など、国民年金第1号被保険者の掛金上限額は、国民年金基金(および国民年金付加保険料)と合算して、月額6.8万円、年間81.6万円です。

また2022年5月からは、国民年金の保険料納付済期間が480月に達していない60歳以上65歳未満、さらに国民年金に任意加入中の海外移住者は、国民年金の任意加入被保険者としてこちらの加入区分に該当し、iDeCoへ加入できるようになっています。

会社員

厚生年金の被保険者であり、国民年金第2号被保険者でもある会社員は、勤務先での企業年金の加入状況によってiDeCoの掛金上限額の設定が分かれます。

会社に企業年金制度がない場合の掛金上限額は月額2.3万円、年間27.6万円です。会社で確定給付年金に加入している場合は月額1.2万円、年間14.4万円となっています。

なお、確定給付年金はDBとも呼ばれる制度で、厚生年金基金、石炭鉱業年金基金、私立学校教職員共済などが含まれます。

さらに2022年10月からは、これまで制限されてきた企業型DC(確定拠出年金)に加入する会社員も、iDeCoに加入しやすくなりました。企業型DCで加入者が掛金を上乗せできるマッチング拠出の場合は、マッチング拠出とiDeCoのどちらかを加入者が自分で選べます。

会社が企業型DCのみに加入している場合の掛金上限額は「月額5.5万円-各月の企業型DCの事業主掛金額」で計算され、月額2万円、年間24万円が上限となります。

会社が企業型DCと確定給付年金に加入している場合は「月額2.75万円-各月の企業型DCの事業主掛金」で計算され、iDeCoの掛金上限額は月額1.2万円、年間14.4万円です。

公務員

公務員も会社員と同じく、厚生年金と国民年金(第2号)の2つの公的年金の被保険者ですが、iDeCoの掛金上限額は月額1.2万円、年額14.4万円のみとなっています。

なお、2022年の法改正により、2024年12月から、会社の企業年金に加入する会社員・公務員のiDeCoの掛金上限額は、月額2万円まで引き上げが予定されています。

・企業型DCに加入する会社員(現在月額2万円)
・企業型DCと確定給付年金に加入する会社員(現在月額1.2万円)
・確定給付年金に加入する会社員・公務員(現在月額1.2万円)

上限の2万円は、会社員は各月の企業型DCの事業主掛金額と確定給付型ごとの他制度掛金相当額、公務員は共済掛金相当額との合算が、それぞれ月額5.5万円を超えない範囲となります。また会社に企業年金制度のない会社員の上限額(月額2.3万円)は変更されません。

この改正に拠出金を増やせる可能性がある一方、企業型DCや共済への拠出額によってはiDeCoの最低掛金額を下回り、iDeCoを利用できない可能性もあります。

専業主婦(主夫)など

専業主婦(主夫)などの国民年金第3号被保険者、つまり厚生年金の被保険者に扶養されている20歳以上60歳未満の場合、iDeCoの掛金上限額は月額2.3万円、年額27.6万円です。

iDeCoの掛金納付ルール

iDeCoの掛金上限額を確認したら、どのように掛金を決定して納付するのか、詳しいルールを見ていきましょう。

掛金は5,000円から1,000円単位で設定できる

iDeCoの掛金は、月々5,000円から1,000円単位で自由に設定できます。現在の資産状況やライフプランにあわせて掛金を設定できるところが特徴です。毎月の掛金が少なくても、長期運用によって老後に備えられます。

ただし、掛金は一度拠出すると原則として60歳までは引き出せません。60歳未満でも、万が一のときには、障害給付金や死亡一時金として給付されるケースはありますが、銀行の普通預金のように気軽に引き出せないため、無理のない掛金にとどめることが大切です。

月単位または年単位で納付する

2017年まではiDeCoの拠出上限額は月単位と決まっていました。しかし、2018年1月から年単位での拠出が始まっており、年1回以上掛金を拠出すればiDeCoの利用要件を満たしたことになります。

また、掛金の納付は年払いや半年払いにも対応するため、ボーナスの支給にあわせて拠出するなど、自分に適したタイミングを選択可能です。

年単位で納付する場合、納付する掛金は「月あたり5,000円以上1,000円単位×拠出する月数」で、加入区分の上限額の範囲内で決定します。

iDeCoでは12月分から翌11月分までの掛金の拠出(掛金の納付月としては1月から12月に該当)を1年とし、これを年単位の基準としています。年単位で納付した掛金が上限額より少額だった場合、iDeCoの基準とする1年以内であれば、次回の納付まで掛金を繰り越せます。

また、iDeCoで掛金を納付する際、国民年金基金連合会手数料105円が必要です。毎月納付なら105円×12回=年1,260円、半年単位なら105円×2回=210円、年単位なら105円となります。

銀行口座から引落しで納付する

iDeCoの掛金は、iDeCoを取り扱う金融機関の口座からの引落しによって納付します。

月単位で掛金を拠出するなら対象月の翌月26日、年単位で拠出するなら拠出基準期間の最終月の翌月26日に口座振替となります。例えば、12月から5月と、6月から11月の半年ごとに拠出する場合、口座振替は6月23日と12月23日の年2回です。

会社員であれば、会社から承認を得ることで給与天引きでの納付も可能です。給与天引きを利用すると、iDeCoに関する年末調整や確定申告の手続きが不要になります。

iDeCoの掛金で押さえておきたいポイント

iDeCoの掛金は、上限額や納付方法のほかにも、いくつか押さえておきたいポイントがあります。iDeCoを始める前に、掛金で把握しておきたい点を解説します。

65歳まで拠出期間が延長された

以前は60歳までだったiDeCoの加入期間が、2022年5月から原則65歳未満まで拡大されています。

対象となるのは、会社員や公務員として働く65歳未満の第2号被保険者です。iDeCoの老齢給付金を受給した人、公的年金を65歳前に繰上げ受給した人は除外されます。

自営業者や専業主婦(夫)など、国民年金の第1・3号被保険者が対象とならないのは、60歳になった時点で国民年金被保険者ではなくなるためです。ただし、国民年金に任意加入する場合、第1・3号被保険者の方でも65歳未満までiDeCoに加入できます。

また、加入期間の延長と同時に、iDeCoの受給開始上限も75歳まで延長されています。60歳以降もiDeCoへの拠出が可能となれば、老後資産をさらに増やすチャンスが広がると期待されます。

掛金額の変更は年に1回のみ

iDeCoの掛金額は年1回まで変更できます。変更できる期間はiDeCoが基準とする1年、12月から翌11月までの間です。

口座引落しをする金融機関に「加入者掛金額登録・変更届」を提出して変更しますが、手続き完了までには1〜2ヶ月ほどかかるため、納付のタイミングなどをあらかじめ確認しておくと安心です。

加入区分の変更は、変更回数には含まれないため、いつでも手続きできます。

掛金はいつでも停止可能

iDeCoの掛金はいつでも拠出を停止できます。教育費など大きな出費、転職など、ライフスタイルの変化から拠出が難しいと思えば、停止を検討するといいでしょう。一度停止しても、また始めたい場合には再開することができます。

掛金の拠出停止の手続きは、口座引落しをしている金融機関、あるいは給与天引きしている会社で行います。

複数の手数料がかかる

iDeCoにかかる手数料には、iDeCoの実施者である国民年金基金連合会に対する手数料と、iDeCoの運用を管理する金融機関の手数料、事務委託を受ける金融機関の手数料があります。

国民年金基金連合会では、iDeCoへの加入手数料(初回のみ)2,829円、転職などによる移管手数料、掛金を納付するたびに支払う加入者手数料105円、また掛金を加入者に還付しなければならないときに還付金から差し引かれる還付手数料1,048円があります。

金融機関による運用管理では、毎月の事務手数料がかかり、金融機関によっては口座管理手数料が発生する場合もあります。さらに、iDeCoで運用する商品を投資信託にした場合には、商品ごとの信託報酬もかかります。

iDeCoでは、拠出した掛金は全額が所得控除の対象となるうえ、運用益には税金がかからないなど、税制面で優遇されています。掛金を受け取るときも、一時払は退職所得控除、年金払いは公的年金等控除を適用されます。

運用開始、運用中、運用後とも大きなコストがかからず、税制面で優遇されるiDeCoなら、掛金が少額でもコツコツ続けることで、コストを上回るリターンが期待されます。

iDeCoの活用に関してはauフィナンシャルパートナーへご相談を

法改正による上限額の変更や要件緩和でiDeCoがあらためて注目されるなか、老後資金の備え方を再検討されるご家庭もあるでしょう。

「原則60歳まで掛金を引き出せないiDeCoにどこまで投じるべきか」「iDeCo以外にどんな資産形成の手段があるか」といったお悩みがあるなら、auフィナンシャルパートナーのauマネープラン相談をご活用ください。

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※ご相談は実際にお会いする形で実施します。お電話、オンライン面談の形式では行っておりません。

まとめ

iDeCoの掛金上限額は、職業などの違いによる加入区分により異なります。自分がどの加入区分なのか、まずは確認することから始めましょう。

また、法改正でここ数年のうちに変更されるルールもあり、2024年12月には掛金上限額の引き上げも予定されている点にはご注意ください。

iDeCoをはじめ、老後生活に向けた資産形成のプランや方法でお悩みなら、お金のプロが適切なアドバイスをご提案するauフィナンシャルパートナーのauマネープラン相談をご利用ください。

執筆者名:
トダ アキコ
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