マッチング拠出とは?iDeCo(イデコ)との違いやメリット・注意点を解説
日本では長寿化が進んでいます。金融庁が2015年に行った推計によると、60歳の夫婦のいずれかが、少なくとも95歳まで生存する割合は50%弱でした。人生100年時代となった今、老後の暮らしに向けて、公的年金だけでなく、自分で運用して資金を準備することも重視されはじめています。
日本の公的年金制度は、国民年金および厚生年金の2階建て構造です。さらに、豊かな老後を過ごすために、3階部分にあたる企業年金や個人年金があります。
企業年金のひとつである企業型確定拠出年金にはマッチング拠出制度があり、企業が拠出する掛金に、従業員が掛金を上乗せできます。本記事では、マッチング拠出の制度のメリットや注意点、iDeCoとの違いなどを解説します。
マッチング拠出とはどんな制度? 知っておきたい企業年金の仕組み
マッチング拠出は、誰がどのように利用できる制度なのでしょうか。ここでは、マッチング拠出制度の概要や利用するための条件、導入実績について説明します。
マッチング拠出とは
マッチング拠出とは、企業年金のひとつである「企業型確定拠出年金(DC)」で、企業が拠出する掛金に、加入者(従業員)が掛金を上乗せして運用できる制度です。
日本の年金制度は、基本的に1階部分が国民年金、2階部分が厚生年金の2階建て構造です。3階部分の企業年金は、退職金の一環として企業が社員のために年金を用意する仕組みであり、公的年金に上乗せして支給されます。
企業年金には、確定給付企業年金(DB)・企業型確定拠出年金(DC)・厚生年金基金の3つがあります。そのうち、企業型確定拠出年金は、確定給付型の企業年金を行えない中小企業の従業員や自営業者からニーズがあり、年々規模を拡大している制度です。
企業型確定拠出年金では、企業が掛金を毎月積み立て、加入者が自分で運用を行います。「企業が拠出する掛金に上乗せしたい」と加入者が希望しマッチング拠出を利用すれば、加入者自身が掛金を上乗せできます。
企業型確定拠出年金には、従業員が自動的に加入する場合と、加入を選べる場合(選択型企業DC)があります。
マッチング拠出の条件
マッチング拠出をする際は、下記の2つの条件があります。
・加入者の拠出する掛金額が、企業が拠出する掛金額を超えないこと
・企業が拠出する掛金と加入者が上乗せした掛金の合計額が、掛金拠出限度額を超えないこと
掛金拠出限度額は、各企業が実施している企業年金制度の体系によって異なります。
マッチング拠出の導入が可能になるのは下記の2つの場合です。
・企業型確定拠出年金のみに加入している
・企業型確定拠出年金のほかに確定給付型(厚生年金基金、確定給付企業年金など)にも加入している
企業型のみ加入している場合は年額660,000円(月額55,000円)、企業型と確定給付型の両方を実施している場合は年額330,000円(月額27,500円)が掛金拠出限度額となります。
例えば、月額55,000円が拠出限度額で、企業側の拠出額が27,500円であれば、マッチング拠出で27,500円まで拠出できます。
マッチング拠出の導入実績
実際に、マッチング拠出制度はどの程度導入されているのでしょうか。
厚生労働省の調査によると、マッチング拠出を導入している事業主の割合は2018年度末で30.7%です(※)。制度がスタートした2012年から導入割合は伸びていますが、近年は横ばいとなっています。
マッチング拠出を導入しない企業の理由としては、「会社の事務負担が大きい」「従業員の関心が低い」「事業主掛金以下という規制が使いにくい」などが挙げられています。
マッチング拠出を導入している企業で実際に実施している従業員は、全体の20%程度であり、多くの従業員はマッチング拠出を行なっていません。また、マッチング拠出を行なっている人の半数近くが、拠出額が5,000円以下であるという結果が出ています。
年齢別でみると、20代〜30代の若い層よりも、40代〜50代と高年齢層の方が大きな割合を占めています。
(※)出典:厚生労働省「第7回 社会保障審議会 企業年金・個人年金部会 資料」
マッチング拠出のメリット
マッチング拠出には、どのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、マッチング拠出制度の魅力を3つ紹介します。
掛金は全額所得控除を受けられる
マッチング拠出で加入者(従業員)が拠出した掛金は、すべて所得控除の対象となります。
所得控除には、基礎控除・配偶者控除・医療費控除などがありますが、マッチング拠出の掛金は「小規模企業共済等掛金控除」に該当します。
例えば、年収500万円の人が30歳から65歳までマッチング拠出を行なうと、どのくらい税制上のメリットがあるのでしょうか。マッチング拠出シミュレーションによると、毎月10,000円を拠出する場合、所得税と住民税に対して年間24,200円の税制上の優遇を受けられます(※)。
(※)シミュレーションであるため、実際の金額を保証するものではありません。
運用中の利益は非課税
マッチング拠出の魅力として、運用益に税金がかからない点が挙げられます。
株式など一般的な金融商品の場合、運用で得た利益に対して約20%の税金がかかるため、運用益が非課税であることは大きなメリットだといえます。
WEBサイト上でシミュレーションが可能な金融機関もあるため、税制上のメリットがどのくらいあるのか知りたい場合は、シミュレーションサービスを活用してみましょう。
受取時にも税制優遇がある
企業型確定拠出年金で運用した資産は、原則60歳に到達すると受け取れます。受給方法は、年金または一時金の2種類から選べます。
企業型確定拠出年金で運用すると、支給時にも税制上のメリットがあります。
年金として受け取る場合は公的年金等控除、一時金として受け取る場合は、退職所得控除を受けることが可能です。
マッチング拠出の注意点
マッチング拠出には、3つの税制上のメリットがある一方、注意点もあります。ここで、マッチング拠出を利用する際に気をつけておくべき点を解説します。
未導入の企業ではマッチング拠出は行えない
すべての企業がマッチング拠出を実施しているわけではないため、未導入の企業ではマッチング拠出は利用できません。
厚生労働省の調査によると、2018年時点でのマッチング拠出を実施している事業主の割合は30.7%です。また、マッチング拠出を実施していない企業のうち、29.9%の企業が「自社では導入の予定がまったくない」と回答しています(※)。
加入者(従業員)がマッチング拠出を希望しても、企業側で未導入の場合は上乗せすることができません。マッチング拠出に興味がある人は、まず勤務先で制度が導入されているかを確認しましょう。
(※)出典:厚生労働省「第7回 社会保障審議会 企業年金・個人年金部会 資料」
原則60歳までは引き出せない
企業型確定拠出年金へ拠出した掛金は、原則60歳になるまで引き出せません。
自由なタイミングで引き出せる預貯金などに比べると、流動性が低い点には注意が必要です。そのため、マッチング拠出で積み立てる場合は、すぐに使う予定がないお金から無理なく拠出できる額に設定しましょう。
マッチング拠出とiDeCoはなにが違うのか
マッチング拠出(企業型確定拠出年金)とiDeCo(個人型確定拠出年金)を比べると、下表のとおりです(※1)(※2)。
マッチング拠出 (企業型確定拠出年金) |
iDeCo (個人型確定拠出年金) |
|
加入対象者 | マッチング拠出を実施している企業の従業員 | ・国民年金第1号被保険者 ・国民年金第2号被保険者 ・国民年金第3号被保険者 ・国民年金任意加入被保険者 |
掛金 | 拠出限度額および企業の拠出額を超えない範囲で、加入者が拠出する | 拠出限度額を超えない範囲で、加入者が拠出する |
拠出限度額 | ・企業型確定拠出年金のみ実施している場合、月額55,000円 ・企業型確定拠出年金と確定給付型の年金の両方を実施している場合、月額27,500円 |
・国民年金第1号被保険者または国民年金任意加入被保険者の場合、月額68,000円(※3) ・国民年金第2号被保険者(会社に企業年金がない場合)月額23,000円 ・国民年金第2号被保険者(企業型DCのみに加入の場合)(※4)月額20,000円 ・国民年金第2号被保険者(確定給付型の年金のみ、または確定給付型の年金と企業型DCの両方に加入している場合)(※5)月額12,000円 ・公務員の場合、月額12,000円 ・国民年金第3号被保険者の場合、月額23,000円 |
運用管理機関 | 企業が選んで契約する | 多数の運用管理機関から、加入者自身が選択する |
(※1)出典:厚生労働省「確定拠出年金の概要」
(※2)出典:企業年金連合会「確定拠出年金のしくみ」
上記資料を元に筆者作成
iDeCoの場合、国民年金の加入区分や企業年金への加入有無によって、掛金拠出限度額が異なります。
また、運用管理機関に関しては、マッチング拠出の場合、企業が選んだ運用管理機関を利用することになりますが、iDeCoの場合は、多数の運営管理機関から加入者本人が自由に選択できます。
マッチング拠出を導入している企業の加入者は、マッチング拠出とiDeCoのいずれかを選べます。企業型確定拠出年金の事業主掛金の額が低い場合は、マッチング拠出よりもiDeCoの方が拠出できる額が大きくなるケースもあります。
マッチング拠出とiDeCoの併用はできないため、自分に適した制度を利用しましょう。
(※3)国民年金基金の掛金、または国民年金の付加保険料を納付している場合は、それらの額を控除した額
(※4)企業型DCの事業主掛金額との合計額が55,000円の範囲内
(※5)企業型DCの事業主掛金額との合計額が27,500円の範囲内
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人生100年時代の今、老後に向けて、国民年金や厚生年金以外でも準備が求められるようになりました。税制優遇を受けながら資産を形成できるマッチング拠出やiDeCoなどは、老後への資産準備として有効な手段のひとつです。
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まとめ
マッチング拠出とは、企業型確定拠出年金で、企業側が拠出する掛金に加入者(従業員)が上乗せして掛金を拠出し、運用する制度です。
iDeCo(個人型確定拠出年金)と同じく、拠出時・運用時・受給時の3つのタイミングで税制上の優遇を受けられます。マッチング拠出を導入している企業では、加入者がマッチング拠出とiDeCoのいずれかを選ぶことも可能です。
老後の生活に向けて、企業年金や個人年金など資産形成方法はさまざまです。自分で選ぶのは難しいと感じる人は、auフィナンシャルパートナーを利用し、お金のプロへ相談するのもおすすめです。
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