資産形成・老後資金 2023.10.13

退職金に税金はかかる?税金の種類や税金の計算方法を解説

退職金の金額を知るには、税金の額を確認する必要があります。退職金から引かれる税金を考慮し忘れると、手取りが思っていた額より少なくなり、退職後の生活資金が足りなくなる可能性があるからです。

退職後に困らないためにも、会社を辞めて退職金を受け取るなら、税金についても正しく理解しましょう。

本記事では退職金にかかる税金の種類や計算方法、必要な手続きなどを紹介します。退職金に税金がどれくらいかかり、納税後の手取りはいくらになるのか、ご自分が受け取る予定の退職金額をもとに計算しましょう。

退職金にかかる税金とは

退職金にかかる税金は、一般的に所得税・復興特別所得税・住民税の3つです。この3つの税金が退職金にかかることで、その分だけ手取りが減ることになります。

まずは3つの税金がどのような税金なのか、概要から見ていきましょう。

所得税

所得税とは、会社から受け取る毎月の給料や退職金、商売をして得たお金など、個人の所得にかかる税金です。

所得税は1月1日から12月31日までの1年間の所得額をもとに計算します。所得税の税率は5%~45%で、多く稼いだ人ほど税率が高くなる累進課税方式です。

所得税を計算する際、1年間の所得額から一定の金額を控除してから税率をかける仕組みになっているため、所得額が控除額以下であれば所得税はかかりません。

所得税の具体的な計算方法は後述しますが、退職金を1円でも受け取れば所得税がかかるわけではなく、控除額を超える退職金がある場合に所得税がかかります。

復興特別所得税

復興特別所得税とは、東日本大震災からの復興のために必要な財源を確保するため、2013年から2037年まで課される税金です。所得税を納める義務がある人は、復興特別所得税もあわせて納める義務があります。

復興特別所得税の税額は、所得税に税率2.1%をかけて求めた金額です。

住民税

住民税とは、地域の行政サービスを提供・維持するために必要な費用に充てるため、その地域に住む住民に課される税金です。住民税の課税方法には所得割と均等割があります。

所得割は所得税と同じく、給料や退職金、事業による所得など、1年間の所得額をもとに税額を計算し、均等割は所得額に関係なく一定の金額が課されます。

また、住民税には都道府県民税と市区町村民税があり、納付先はその年の1月1日時点で住所地がある自治体です。

税金は退職金の受け取り方で変わる

退職金にかかる税金の計算方法は、退職金の受け取り方で変わります。退職金を一時金で受け取る場合と年金で受け取る場合では、税金が変わるのにともない手取りも変わる場合があるため注意が必要です。

以下では、一時金と年金、それぞれの受け取り方で退職金にどのような税金がかかるのか紹介します。

退職金を一時金として受け取る

所得税や住民税を計算する際、所得の性質に応じて10種類の所得に区分したうえで税金を計算します。退職金は受け取り方によって所得区分が変わり、一時金で受け取る場合の所得区分は退職所得です。退職所得はほかの所得とは合算せず分けて計算します。

会社から受け取るお金のうち、毎月の給料やボーナスは総合課税が適用されるためほかの所得と合算して税金を計算しますが、一時金で受け取る退職金はほかの所得とは分けて計算する分離課税です。

総合課税の場合は、ほかにも所得があると所得額が大きくなって高い税率が適用されることがありますが、分離課税の場合はほかの所得額は関係ありません。退職金にかかる税金を計算する際には、退職所得金額をもとに適用する税率を判定して税額を計算します。

退職金を年金として受け取る

退職金を年金で受け取る場合、10種類ある所得区分のうち雑所得として所得税・住民税を計算します。雑所得の課税方式は、ほかの所得と合算して税金を計算する総合課税方式です。

退職金を年金形式で各年に分けて受け取る場合、その年の受取額に応じて税金を計算し、年金以外にも所得がある場合はほかの所得も合算したうえで税率を判定して税金を計算します。

退職金を一時金と年金の両方で受け取る

退職金の一部を一時金で受け取り、残りを年金で受け取る場合、一時金として受け取る部分は退職所得、年金で受け取る部分は雑所得に分類されます。

退職する際に受け取る一時金は退職所得としてほかの所得とは合算せずに分けて税金を計算し、各年に年金で受け取る分は雑所得としてその年のほかの所得と合算して税金を計算します。

退職金にかかる税金の計算方法

退職金にかかる税金の計算方法は、一時金で受け取って退職所得になる場合と年金で受け取って雑所得になる場合で変わります。

退職所得になる場合

まず、退職所得になる場合は、勤続年数が5年超の場合と5年以下の場合で計算式が異なります。5年超の場合の退職所得の計算式は以下のとおりです(5年以下の場合の計算式については後述します)。

・退職所得金額 = (退職金額 - 退職所得控除額)× 1/2(※)
・退職金(退職所得)にかかる税金 = 退職所得金額 × 税率 - 控除額

退職所得控除額とは以下の式で計算した金額です。勤務年数に1年未満の端数がある場合は1年に切り上げて計算します。

勤続年数(=A) 退職所得控除額
20年以下 40万円 × A(80万円に満たない場合は80万円)
20年超 800万円 + 70万円 × (A - 20年)

所得税では退職所得金額に応じて以下の表のように税率が決まり、住民税では基本的に税率10%です。

課税退職所得金額 税率 控除額
195万円未満 5% 0円
195万円以上330万円未満 10% 9.75万円
330万円以上695万円未満 20% 42.75万円
695万円以上900万円未満 23% 63.6万円
900万円以上1,800万円未満 33% 153.6万円
1,800万円以上4,000万円未満 40% 279.6万円
4,000万円以上 45% 479.6万円

例えば、勤続年数35年7ヶ月の人が退職金3,000万円を受け取るケースであれば、退職所得控除額は「800万円 + 70万円 × (36年 - 20年) = 1,920万円」、退職所得金額は「(3,000万円 - 1,920万円) × 1/2 = 540万円」です。

そのため、所得税・復興特別所得税・住民税はそれぞれ以下のように計算できます。

・所得税:540万円 × 20% - 42.75万円 = 65.25万円
・復興特別所得税:65.25万円 × 2.1% = 13,702円(端数切り捨て)
・住民税:540万円 × 10% = 54万円

退職金の支給額が3,000万円でも、税金が約120万円かかる結果、その分だけ手取りが減ることがわかります。

雑所得になる場合

つづいて、雑所得になる場合の計算式は以下のとおりです。

・公的年金等に係る雑所得金額 = 公的年金等に係る収入金額 - 公的年金等控除額
・退職金(雑所得)にかかる税金 = 雑所得金額 × 税率 - 控除額

公的年金等控除額を引いた後の雑所得の金額は、以下の表に当てはめると計算できます。なお、以下の計算式は公的年金等に係る雑所得以外の所得に係る合計所得金額が1,000万円以下の場合の計算式です。1,000万円超の場合は計算式が異なります。

年齢 公的年金等の収入金額の合計額 公的年金等に係る雑所得の金額
65歳未満 60万円以下 0円
60万円超 130万円未満 収入金額の合計額 - 60万円
130万円以上 410万円未満 収入金額の合計額 × 0.75 - 27.5万円
410万円以上 770万円未満 収入金額の合計額 × 0.85 - 68.5万円
770万円以上 1,000万円未満 収入金額の合計額 × 0.95 - 145.5万円
1,000万円以上 収入金額の合計額 - 195.5万円
65歳以上 110万円以下 0円
110万円超 330万円未満 収入金額の合計額 - 110万円
330万円以上 410万円未満 収入金額の合計額 × 0.75 - 27.5万円
410万円以上 770万円未満 収入金額の合計額 × 0.85 - 68.5万円
770万円以上 1,000万円未満 収入金額の合計額 × 0.95 - 145.5万円
1,000万円以上 収入金額の合計額 - 195.5万円

(※)公的年金等に係る雑所得以外の所得に係る合計所得金額が1,000万円以下の場合

税率は、所得税では課税所得金額に応じて先ほど紹介した税率表にしたがって決まり、住民税では基本的に10%です。

例えば、65歳に退職した後、退職金3,000万円を10年間に分けて毎年300万円ずつ受け取る場合、公的年金等に係る雑所得金額は「300万円 - 110万円 = 190万円」です。

そのため、ほかに所得がない場合、毎年受け取る退職金にかかる所得税・復興特別所得税・住民税はそれぞれ以下のように計算できます。

・所得税:190万円 × 5% = 9.5万円
・復興特別所得税:9.5万円 × 2.1% = 1,995円(端数切り捨て)
・住民税:190万円 × 10% = 19万円

5年以内に退職した場合

勤続年数5年以下の人が退職金を一時金で受け取る場合、退職所得の計算式が勤続年数5年超の人とは異なります。

通常、退職金を一時にまとめて受け取る場合、そのまま累進税率を適用すると税額が高額になる場合があります。しかし、退職金には長期間にわたる勤務の対価の一括後払いという性格があるため、税負担は平準化されるべきです。そのため、累進税率の適用を緩和し、税負担の平準化を図る目的で2分の1課税の措置が講じられています。

一方、長期間にわたる勤務の対価とはいえない場合は、本来の退職金とは性質が異なるため、軽減措置の対象外となります。そのため、勤務年数が5年以下のケースでは、以下の基準が定められています。

役職 手当の種類 基準
役員等の場合 特定役員退職手当等 勤続年数に応じて退職所得控除額を差し引くことはできるが残額の2分の1とする措置はない
役員以外の場合 短期退職手当等 収入金額から退職所得控除額を控除した残額のうち300万円を超える部分の金額については2分の1課税を適用しない

勤続年数が5年以下の役員の場合、退職所得の計算式は以下のとおりです。

・退職所得金額 = 退職金額 - 退職所得控除額
・退職金(退職所得)にかかる税金 = 退職所得金額 × 税率 - 控除額

例えば、勤続年数4年7ヶ月の役員が退職金600万円を受け取るケースであれば、退職所得控除額は「40万円 × 5年 = 200万円(※)」、退職所得金額は「600万円 - 200万円 = 400万円」です。

そのため、所得税・復興特別所得税・住民税はそれぞれ以下のように計算できます。

・所得税:400万円 × 20% - 42.75万円 = 37.25万円
・復興特別所得税:37.25万円 × 2.1% = 7,822円(端数切り捨て)
・住民税:400万円 × 10% = 40万円

(※)「4年7ヶ月」のように1年に満たない端数がある場合は、1年に繰り上げて計算します。

退職金を受け取る際の注意点

退職金を受け取る際には税金に関して注意すべき点があります。以下では、退職金を受け取った後に行う手続きや退職金の受け取り方に関する注意点を紹介します。

確定申告をした方が良い場合がある

退職する際に「退職所得の受給に関する申告書」を勤務先に提出すれば、所得税・復興特別所得税が正しい税額で天引きされるため、退職金を受け取る人が確定申告をして納税をする必要はありません。

しかし「退職所得の受給に関する申告書」を提出していない場合は、税率20.42%で所得税・復興特別所得税が天引きされるので、退職金を受け取る人が確定申告をして正しい税額に精算する必要があります。

確定申告の方法は「税務署の窓口で手続きする方法」「税務署に書類を郵送して手続きする方法」「e-Taxを使って手続きする方法」の3つです。確定申告をする場合は、翌年に忘れずに手続きをするようにしてください。

退職金前払い制度を利用した場合

退職金を退職時に受け取るのではなく、給与や賞与に上乗せして退職金を事前に支払う退職金前払い制度を導入している企業があります。

退職金前払い制度を利用して退職金を受け取ると、退職所得ではなく給与所得として課税されるため、累進税率が適用されて税率が高くなる場合があります。また、退職所得とは違って給与所得だと2分の1課税の適用を受けられません。

退職時に受け取って退職所得として課税される場合に比べると、税金が高くなって税引き後の手取りが減る場合があります。

また、退職所得ではなく給与所得の扱いになると社会保険料がかかるため、健康保険料や厚生年金保険料などが引かれます。退職金前払い制度は、退職時まで待たずに退職金を受け取ることができ、早くから資産を活用できる点がメリットではありますが、手取りが減るため注意してください。

退職金に関する相談はauフィナンシャルパートナーへ

退職後の生活について考えるときには、現在の貯蓄額や会社から支給される予定の退職金額などを踏まえて、退職後の生活費をまかなえるのか考える必要があります。退職後に生活資金で困ることがないように、退職する前から確認しておくことが大切です。

定年退職にあたって老後のライフプランを考える場合は、退職後に収入がなくなる人もいますし、再雇用・再就職などで働き続ける場合でも、収入が減るケースが少なくありません。

そのため、定年退職後の生活で収支がどうなるか、あらかじめシミュレーションして確認しておきましょう。

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まとめ

退職金には一般的に所得税・復興特別所得税・住民税の3つの税金がかかります。

会社から退職金をもらう場合、退職金額そのものが手元に残るわけではありません。手元に残る金額は納税後の金額であり、退職後の生活資金として使える金額は3つの税金を引いた後の金額です。

納税後にいくら手元に残るのか、あらかじめ計算して確認しておきましょう。

また、退職する際に「退職所得の受給に関する申告書」を勤務先に提出していれば確定申告は不要ですが、提出していない場合は確定申告をして精算することになります。

退職金や退職後の生活について考える際には、税金をはじめとしたさまざまな知識が必要です。ライフプランを考える場合や生活費の見直しを行う場合、お金のプロであるFPに相談するのも選択肢のひとつとなります。

auフィナンシャルパートナーでは、老後資金の相談や資産形成に関するシミュレーションを無料で行っているので、お気軽にご相談ください。

執筆者名:
大木 ゆうすけ
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