保険見直し 2023.3.31

地震保険はいくら?保険料の決め方や安く抑えるポイントも解説

地震が多い日本において、地震保険は重要な意味をもちます。地震保険の加入を検討するにあたって、保険料がいくらかかるのか気になる方は多いのではないでしょうか。

本記事では地震保険の加入を検討している方に向けて、地震保険の保険料がどのように決まるのか、わかりやすく解説します。

納得して加入できるように、地震保険料を安く抑えるポイントや地震保険の補償内容もあわせて確認しましょう。

地震保険とは

地震保険は火災保険とは別のものです。地震や噴火、津波を原因として発生した火災や損壊、埋没、流失による住宅や家財の損害を補償する保険です。

火災保険では地震が原因の損害は補償されないため、地震による損害に備えるには地震保険に加入する必要があります。

地震保険は火災保険とセットで契約する必要があり、単独では契約できません。すでに火災保険に加入している場合は、契約期間の途中からでも地震保険を付帯(追加)できます。

地震保険は地震などによる被災者の生活の安定を目的として、民間保険会社と政府が共同で提供する公共性の高い保険です。巨大地震発生時には、一定額以上の保険金支払いを政府が担い、保険金がスムーズに支払われる仕組みになっています。

1回の地震による保険金総支払限度額は、民間保険会社負担分もあわせて12兆円(2023年4月現在)です。関東大震災クラスの地震と同じ規模の巨大地震が発生しても対応できる金額に設定されています。

地震保険の保険料はいくら?

地震保険料は、建物の所在地と構造、免震・耐震性能によって決まります。

国と保険会社が共同で提供している保険制度のため、同じ条件であればどの保険会社で加入しても保険料は同じです。

地震保険の保険料の決め方

地震保険料は、保険の対象である「居住用建物および家財を収容する建物の所在地」と「建物の構造」を基準に、「建物の免震・耐震性能による割引」を加味して決まります。

建物の所在地と構造、保険金額、該当する割引(割引制度の詳細は後述)がわかれば、地震保険料を試算できます。

建物の構造

地震保険では、建物の構造をイ構造(耐火建築物・準耐火建築物など)とロ構造(非耐火建築物)の2つに区分し、異なる保険料率(※1)が適用されます。

イ構造にはマンションをはじめとした鉄骨・コンクリート造の建物、ロ構造は主に木造住宅が該当します。木造住宅でも、一定の耐火性能を備えた「耐火建築物」「準耐火建築物」「省令準耐火建築物」に該当すればイ構造です。

地震保険の建物構造区分(※2)

地震保険の構造区分 火災保険の構造区分
イ構造 耐火建築物、準耐火建築物、
省令準耐火建築物
(主に鉄骨・コンクリート造の建物)
【住宅物件】
M構造、T構造
【一般物件】
1級構造、2級構造
ロ構造 イ構造以外の建築物
(主に木造建物)
【住宅物件】
H構造
【一般物件】
3級構造

イ構造の方がロ構造よりも火災のリスクが低い(燃えにくい)ため、ほかの条件が同じであれば保険料は安くなります。

(※1)単位保険金額あたりの保険料
(※2)出典:日本損害保険協会「すまいの保険/地震保険」

建物の所在地

地域によって地震に遭うリスクが異なるため、政府が発表する地震動予測地図を元に、都道府県ごとに保険料率(基本料率)が設定されています。

都道府県別の地震保険料(保険金額1,000万円あたり/保険期間1年/2022年10月1日以降保険始期の契約)

都道府県 建物構造区分
イ構造 ロ構造
千葉県、東京都、神奈川県、静岡県 2万7,500円 4万1,100円
埼玉県 2万6,500円
宮城県、福島県、山梨県、愛知県、三重県、大阪府、和歌山県、香川県、愛媛県、宮崎県、沖縄県 1万1,600円 1万9,500円
北海道、青森県、岩手県、秋田県、山形県、栃木県、群馬県、新潟県、富山県、石川県、福井県、長野県、岐阜県、滋賀県、京都府、兵庫県、奈良県、鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県、福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、鹿児島県 7,300円 1万1,200円

(※)出典:財務省「地震保険の基本料率(令和4年10月1日以降保険始期の地震保険契約)」

同じイ構造でも、料率が最も高い東京都の保険料は、料率が最も低い北海道の約3.8倍です。

地震保険の割引制度

地震保険には、建物の建築年または免震・耐震性能に応じて4つの割引制度があります。

地震保険料の割引制度

割引制度 適用条件 割引率
免震建築物割引 対象物件が「住宅の品質確保の促進等に関する法律」にもとづく「免震建築物」である場合 50%
耐震等級割引 対象物件が「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に規定する日本住宅性能表示基準に定められた耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)、または国土交通省の定める「耐震診断による耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)の評価指針」に定められた耐震等級を有している場合 耐震等級3 50%
耐震等級2 30%
耐震等級1 10%
耐震診断割引 対象物件が、地方公共団体等による耐震診断または耐震改修の結果、建築基準法(1981(昭和56)年6月1日施行)における耐震基準を満たす場合 10%
建築年割引 対象物件が、1981(昭和56)年6月1日以降に新築された建物である場合 10%

(※)出典:財務省「地震保険制度の概要」

複数の割引制度に該当する場合は最も高い割引率が適用され、重複適用はされません。免震建築物割引と建築年割引の条件を満たす場合でも、割引率は60%(50%+10%)にはならず50%です。

地震保険の保険料を抑えるためのポイント

地震保険料を抑えるポイントは、長期契約と地震料保険料控除にあります。以下で詳しい内容を解説します。

長期契約割引(長期係数)

保険期間2年以上の地震保険の保険料は、1年契約の保険料に以下の長期係数をかけて算出されます。長期係数は対応する年数よりも小さいため、2年以上の保険期間で契約すれば1年あたりの保険料が安くなります。なお、地震保険の保険期間は最長5年です。

長期係数(2022年10月以降保険始期契約〜)

保険期間契約期間 長期係数 1年あたりの保険料/1年契約保険料
2年 1.90 95.0%(割引率5%)
3年 2.85 95.0%(割引率5%)
4年 3.75 93.75%(割引率6.25%)
5年 4.70 94.0%(割引率6%)

(※)出典:財務省「地震保険制度の概要」を元に筆者作成

2022年10月の地震保険改定では、金利水準の低下を受けて5年契約の長期係数が引き下げられ(4.65→4.70)、4年契約の割引が高くなる逆転現象がおきています。

地震保険料控除

本人や同一生計親族の有する居住用家屋または家財の地震保険料は「地震保険料控除」の対象になり、所得税と住民税を計算する際の所得金額から一定額の控除を受けられます。保険料自体が安くなるわけではありませんが、控除によって所得税と住民税が軽減され、実質的な保険料負担を抑える効果が期待できます。

地震保険料控除の控除額

年間の支払保険料 年間の控除限度額
所得税 5万円まで 保険料の全額
5万円超 一律5万円
住民税 5万円まで 保険料の2分の1
5万円超 一律2万5,000円

(※)出典:損害保険協会「共通/Ⅵ.損害保険と税金について」

例えば年間の地震保険料が4万円だった場合、所得税を計算する際の所得からは4万円、住民税を計算する際の所得からは2万円を控除できます。

所得税率が10%の方の場合、所得税は4万円×10%=4,000円軽減されます(復興特別所得税を含めると4,084円)。住民税率(所得割)は一律10%なので、住民税の軽減額は2万円×10%=2,000円です。

複数年分の保険料を一括で払い込んだ場合は、一括払い保険料を保険期間で割って1年分に換算した金額が毎年の控除対象保険料になります。例えば保険期間5年、一括払い保険料が15万円であれば、年間の控除対象保険料は15万円÷5年=3万円です。

地震保険料控除を受けるには、年末調整または確定申告で毎年手続きが必要です。忘れないように手続きを行いましょう。

地震保険ではどこまで補償される?

地震保険は、地震による損害をすべて補償してくれるわけではありません。何が補償対象になるのか、保険金はいくら支払われるのかも知っておきましょう。

補償の対象となるもの

地震保険では、地震、噴火、津波が原因で「居住用」の建物と家財(生活用動産)に生じた損害が補償されます。

ただし、以下のものは補償対象外です。
・1個または1組の価額が30万円を超える貴金属・宝石・骨とう
・通貨
・有価証券(小切手、株券、商品券等)
・預貯金証書
・印紙
・切手
・自動車 など

工場や事務所専用の建物など、住居として使用されない建物も補償対象に含まれません。

集合住宅の場合はどこまでが補償範囲?

分譲マンションなど、集合住宅にお住まいの方が個人で加入する地震保険の補償範囲は、「専有部分」と「家財」です。

専有部分とは、各個人(区分所有者)が単独で所有する建物(住戸)の部分、部屋の内部のことをいいます。具体的には、室内の天井や床、壁紙(表層部分)、カーペットなどです。

集合住宅の住人全員で共有している部分は「共用部分」と呼ばれ、各個人が加入する地震保険の補償範囲には含まれません。具体的には、廊下、階段、エレベーター、エントランス、バルコニー、外壁、管理人室、集会室、専有部外部の電気・ガス・水道設備などが該当します。住戸内でも、コンクリート部分や火災感知器は共用部分です。

共用部分の地震保険は、一般的に集合住宅の管理組合で加入するため、住人が個人で契約する必要はありません。

なお、実際の共用部分の地震保険加入率は増加傾向にはあるものの、2021年度時点で5割程度(※)にとどまっているのが現状です。

(※)出典:財務省「地震保険の加入促進について」

補償できないケース

以下のようなケースは地震保険で補償されず、保険金は支払われません。

・地震の発生日から10日以上経過後に生じた損害
・故意もしくは重大な過失または法令違反による損害
・戦争、内乱などによる損害
・地震等の際の紛失・盗難の場合

保険金の支払い

地震保険の保険金額は、セットで加入する火災保険の保険金額の30%〜50%の範囲内で設定します。ただし保険金額には上限があり、建物5,000万円、家財1,000万円が限度です。

火災保険の目的は「実際の損害を補償(≒損害を元通りに復旧)」することです。そのため、損害が生じたときに同等のものを再築、購入するのに必要な金額である「新価(再調達価格)」を基準に保険金額を設定するのが一般的です。

新価(再調達価格)で保険金額を設定した場合、損害発生時には保険金額を上限に実際の損害額が保険金として支払われます。

一方、地震保険の目的は「被災者の生活の安定」であり、そもそも保険金だけで損害を元通りにできる仕組みではありません(特約を付帯した場合を除く)。

保険の対象である建物や家財の損害額が時価額(評価額)の一定割合以上になったとき、損害の程度に応じて保険金が支払われます。

地震保険で保険金が支払われる損害の程度は、「全損」「大半損」「小半損」「一部損」の4段階に区分されます(2017年1月1日以降の保険始期契約の場合)。その基準は以下のとおりです。

建物の損害の程度の基準

2016年
以前
保険始期
2017年
以降
保険始期
基準
(以下のいずれかに該当する場合)
建物の時価額に占める主要構造部(土台、柱、壁、屋根等)の損害額の割合 建物の延床面積に占める焼失または流失した部分の床面積の割合
全損 全損 50%以上 70%以上
半損 大半損 40%以上50%未満 50%以上70%未満
小半損 20%以上40%未満 20%以上50%未満
一部損 一部損 3%以上20%未満
床上浸水もしくは地盤面より45cmを超える浸水を受け、損害が全損、大半損、小半損に至らない場合

(※)出典:財務省「地震保険制度の概要」を元に筆者作成

家財の損害の程度の基準

2016年以前
保険始期
2017年以降
保険始期
基準
(家財全体の時価額に占める損害額の割合)
全損 全損 80%以上
半損 大半損 60%以上80%未満
小半損 30%以上60%未満
一部損 一部損 10%以上30%未満

(※)出典:財務省「地震保険制度の概要」を元に筆者作成

保険会社は建物と家財の損害状況を調査し、その程度に応じて保険金を支払います。損害が一部損に満たない場合、保険金は支払われません。

支払われる保険金の額

2016年以前の保険始期契約 2017年以降の保険始期契約
全損 地震保険金額の100%
(時価額が限度)
全損 地震保険金額の100%
(時価額が限度)
半損 地震保険金額の50%
(時価額の50%が限度)
大半損 地震保険金額の60%
(時価額の60%が限度)
小半損 地震保険金額の30%
(時価額の30%が限度)
一部損 地震保険金額の5%
(時価額の5%が限度)
一部損 地震保険金額の5%
(時価額の5%が限度)

(※)出典:財務省「地震保険制度の概要」

補償できないケース

以下のようなケースは地震保険で補償されず、保険金は支払われません。

・地震の発生日から10日以上経過後に生じた損害
・故意もしくは重大な過失または法令違反による損害
・戦争、内乱などによる損害
・地震等の際の紛失・盗難の場合

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まとめ

地震保険の保険料は建物の所在地と構造(+設定する保険金額)によって決まります。どの保険会社で加入しても保険料は同じですが、割引制度や長期契約で安くなることがあります。

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執筆者名:
竹国 弘城
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