資産形成・老後資金 2023.3.31

年金はいつからもらえる?受給開始年齢の変更方法や手続きの注意点を解説

年金は、原則として65歳から支給されるものと定められています。

年金の受給開始より前にお金が必要になった場合など、年金の受給開始時期は前倒しできるのでしょうか。またその際、受取額に影響があるのかも気になるところです。

年金の受給制度や手続きについて疑問をお持ちの方も、あらかじめ仕組みを理解しておくことで、老後を安心して迎えることができます。年金をもらえる時期や必要な手続き、注意点を事前に把握して、具体的な将来設計を考えましょう。

年金の受給開始はいつ?どんな種類がある?

日本の年金の種類は、公的年金と私的年金に分けることができます。

私的年金には企業年金や個人年金があり、各年金の制度や商品によって詳細が異なります。本記事では、公的年金に関して詳しく解説します。

公的年金である国民年金と厚生年金

「国民皆年金」といわれる公的年金は、「国民年金(老齢基礎年金)」と、「厚生年金(老齢厚生年金)」の2階建て構造です。

国民年金は、農業者・自営業者・学生・無職の方などが対象となる年金制度の1階部分、

厚生年金は、会社員・公務員の方が対象となる年金制度の2階部分といわれています。

公的年金はこの構造により、高齢者に対する給付を現役世代が支払う保険料で支える仕組みとなっています。

年金はいつからもらえる?

年金は、原則として65歳から受給することができ、65歳から受給する場合は、誕生月の翌月から支給対象となります。

受給年齢に到達した際、年金は自動的に振込まれるわけではなく、受取には手続きが必要となるため、注意しましょう。

年金には、加入していた年金制度によって、国民年金の「老齢基礎年金」と厚生年金保険の「老齢厚生年金」があり、老齢厚生年金は、老齢基礎年金に上乗せして支払われます。

どちらの年金にも、60歳から65歳になるまでの間に年金を受け取り始める「繰上げ受給」と、66歳から75歳までの間で受給を開始する「繰下げ受給」があります。ただし、繰上げや繰下げにはいくつか注意点がありますので、この注意点については後述します。

年金支給日はいつ?

年金は、原則として偶数月の15日に振込まれ、15日が土日祝の場合は、その直前の平日に振込まれます。

なお、振込時には振込前の2ヶ月分が合算されます。例として、12月・1月の年金合計が2月15日に振込まれることになります。

年金支給の対象者は?

年金を受け取るためには、年金加入期間が10年以上あり、受給開始年齢である65歳に到達している必要があります。

繰上げ・繰下げにはそれぞれメリットと注意点があるため、次項で詳しく解説します。

繰上げ受給で年金の受給を早める

年金事務所に請求手続きを行うことで、本来であれば65歳からスタートする年金の受給開始時期を早めることができます。

老齢基礎年金と老齢厚生年金はセットで繰上げとなることを把握しておきましょう。

年金を繰上げ受給するメリット

年金を繰上げ受給すると、すぐに使えるお金が増えて家計に余裕が出ます。

手元資金に困っている、健康上の不安があり早く現金を受け取りたいなど、明確な理由があって繰り上げたい場合には適した制度であるといえます。

年金を繰上げ受給する際の注意点

繰上げ受給の注意点として挙げられるのは、年金が減額される点と、一度繰上げ請求をすると取り消しや修正ができない点です。

減額率は昭和37年4月2日以降生まれの方の場合で0.4%、繰り上げた月数分が一生涯にわたり減額されます(※)。また、付加年金を受け取れる場合も同じ率で減額されます。

また、雇用保険や老齢厚生年金・寡婦年年金を含む、ほかの年金や給付金の全部、または一部が停止される場合があるので注意が必要です。遺族厚生年金や遺族共済年金との併給もできません。障害基礎(厚生)年金の請求や、年金を増やす方法である「国民保険の任意加入」「保険料の追納」の制度利用もできなくなります。

加給年金や振替加算がついている場合、加給や振替分は繰り上がらず本来の加算時期からつくことになります。

このように、繰上げ受給には注意点が多数あります。申請は慎重に検討しましょう。

(※)昭和37年4月1日以前生まれの方の減額率は、0.5%

繰下げ受給で年金を増やす

年金には、繰下げ受給の制度もあります。

次に、繰下げ受給のメリットと注意点をそれぞれ解説します。

年金を繰下げ受給するメリット

繰下げ受給のメリットは、年金の受給開始時期を遅らせることで受け取る年金の額を増やすことができる点です。

繰り下げる年齢は、66歳から75歳までの間で任意に設定できます。

繰上げ受給の場合とは異なり、65歳に達した月から繰下げを申し出た月の前月までの月数に、0.7%をかけた分が増額されます。老齢基礎年金と老齢厚生年金、一方だけの繰下げも可能で、老齢基礎年金に上乗せして付加年金を受け取れる場合、同率で繰り下げられ増額されます。

年金を繰下げ受給する際の注意点

繰下げ受給では、年金が増えた分だけ介護保険料や税金の負担が増えるため、増額分の額面どおりの金額が丸々手元に残るわけではありません。

また、66歳になるまでに障害給付金や遺族給付金を受け取る権利がある場合、繰下げ受給はできません。例外として、障害基礎年金のみ受給権がある人は老齢厚生年金の繰下げは可能です。

加給年金や振替加算がついている場合、加給や振替分は増額されずに繰り下げた時点からつくことになります。

繰上げ同様、一度繰下げの手続きを行うと取り消すことはできないため、注意しましょう。

年金を受け取るために必要な手続き

この章では、年金を受け取るためにはどのような必要な手続きが必要か、年齢別に解説します。

必要な添付書類は、日本年金機構へのマイナンバー登録有無や厚生年金への加入期間・家族の状況によって異なるので、年金事務所に確認しましょう。

65歳で年金を受け取る場合

65歳から受取を開始する場合は、65歳に到達する3ヶ月前に年金事務所から送付される「年金請求書」に受取口座を含む必要事項を記入し、65歳の誕生日の前日以降に返送しましょう。

請求書を提出してから約1~2ヶ月後に「年金証書・年金決定通知書」、さらに1~2ヶ月後に「年金のお支払いのご案内(年金振込通知書・年金支払通知書または年金送金通知書)」が届き、年金の支給が始まります。

60~64歳(繰上げ受給)で年金を受け取る場合

繰上げを希望する場合は、繰上げ請求書を年金事務所に提出します。

手続き時点で減額率が決定するため、提出のタイミングには注意しましょう。

66歳以降に繰下げ受給で年金を受け取る場合

繰下げ受給を希望する場合は、66歳以降の繰下げを希望するタイミングで年金事務所に繰下請求書を提出します。

こちらも手続きした時点で増額率が決定するため、いつ提出するかよく考えることが大切です。

特別支給の老齢厚生年金を受け取る場合

昭和60年に厚生年金保険の受給開始が60歳から65歳まで引き上げられたことにともない、受給開始年齢をスムーズに引き上げるための措置として設けられたのが「特別支給の老齢厚生年金」の制度です。

男性は昭和36年4月1日以前生まれ、女性は昭和41年4月1日以前生まれが対象で、受給開始年齢は年齢と性別により異なります。支給の条件として、老齢基礎年金の受給資格と厚生年金保険などへの1年以上の加入歴があり、生年月日に応じた受給開始年齢に達していることが必要です。

対象者には受給開始年齢に達する3ヶ月前に年金請求書が届くので、受取口座を含む必要事項を記入のうえ、受給開始年齢の誕生日の前日以降に返送します。

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年金受給の開始時期は繰上げも繰下げも可能ですが、それぞれにメリットと注意点があります。

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執筆者名:
垣田 京子
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